転がってきたボールに乗り上げた過失

交通事故オンライン損害賠償編

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伊佐行政書士事務所

公園でボール遊びをする者に過失はあるのか

最近はボール遊び禁止の場所も増えていますが、子供が公園でボール遊びをするのは、ごく自然のことです。 とりそこなったボールが、思わぬ方向へ転がっていくのも、ありふれた出来事といえるでしょう。そのボールがたまたま道路に転がっていった時、ボール遊びをする者に過失を問うことがはたしてできるのでしょうか。

道路上でボール遊びをしていて、そのボールのために事故が起きた時は、ボール遊びをしていた人には過失ありとされることが多いでしょう。 それは道路でボール遊びをすれば、交通の邪魔になるなどの危険があるということが、当然予想できるからです。では公園内ではどうでしょうか。 例えば狭い公園で、柵も低く、ボールが少し跳ねれば道路に転がっていくということが、簡単に予測できる状況であれば、事前に危険を認識できますので、過失が認められる可能性が高いと思われます。

ほとんどのケースでボール遊びをしていたものの過失が認められることとなると思いますが、例えばサッカー用に高いネットが張り巡らされた広い公園で、たまたま蹴ったボールが小さなネットの破れを抜けて道路上に転がりでた場合などは、過失を問われないケースもあると思われます。

公園横の道路を通行する車両の注意義務

公園から突然サッカーボールが転がり出てきて、バイクがそれに乗り上げて転倒した場合、運転者にはどの様な過失があるのでしょうか。

突然ボールが転がってきて、それに乗り上げて転倒し、大けがをしたとしたら、100%被害者という気持ちになるのが人情かもしれません。 ところが運転者には重い注意義務が課せられています。もしもその公園の見通しが良く、子供がボール遊びをしているのが容易に確認できるような場合は、公園内からボールや子供が 飛び出してくることを予見して速度を落とすなどの行動をとるべきであるとされています。 そうした行動を取らずに事故になった場合は、転倒したバイクの方の過失が大きくなる場合もあるのです。 下図はバイクに8割の過失が認められた事例です。

転がってきたボールに乗り上げて転倒したバイクの過失

子供が蹴ったボールでの事故の、親の監督責任

11歳男児が蹴り、小学校校庭から転がり出たサッカーボールをよけようとしたバイク男性が、骨折後、認知症を発症、一年半後に死亡した事故につき、最高裁は、 「日常的な行為の中で起きた、予想できない事故については両親は監督責任を負わない」とした。 (平成27年4月9日最高裁判決)

なお、上記最高裁判例は『サッカーゴールも設置された小学校の校庭で、日常的な使用方法で練習をしていたこと、 ボールが道路上に出ることが常態ではなかったこと、男児が殊更に道路に向けてボールを蹴ったなどの事情もないこと』などから 通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、 予見可能であるなどの特別の事情が認められない限り、子に対する親権者の監督義務を尽くしていなかったとすべきでない、と結論づけています。 逆にいえば、ボールを蹴っていた場所や、その他の道路状況等によっては、たとえサッカーゴールが設置されている場所であっても、また、ボール遊びが禁止されていない公園であっても、両親の監督責任を問われるケースもあるということが考えられます。