逸失利益の計算式
逸失利益とは、その障害がなければ将来得られるはずだった利益のことをいいます。 例えば年収500万円で、あと5年は働けるはずだった人が第1級の後遺障害で働くことができなくなった場合は、2,500万円の減収になります。 いまだ現実化していない損害ですので、計算方法も以下のように予測に基づくものとなります。
(後遺障害逸失利益の計算式)
年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働能力の喪失
後遺障害が残りますと、通常は労働能力の喪失が起こります。例えば事故で両腕を失った方は労働能力を100%喪失したとされ、 片目が失明した場合は労働能力を45%喪失したとみなされます。
障 害 等 級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
第1級 | 100/100 |
第2級 | 100/100 |
第3級 | 100/100 |
第4級 | 92/100 |
第5級 | 79/100 |
第6級 | 67/100 |
第7級 | 56/100 |
第8級 | 45/100 |
第9級 | 35/100 |
第10級 | 27/100 |
第11級 | 20/100 |
第12級 | 14/100 |
第13級 | 9/100 |
第14級 | 5/100 |
労働能力喪失率はこのように表によって決められており、裁判などでも概ねこの表を参考に喪失率を決めていますが、 個別の事情により上下される場合もあります。
労働能力の喪失が必ずしも発生しない場合
後遺障害等級が認定された場合でも、労働能力の喪失が認められず、逸失利益はないとされる場合があります。
- 醜状障害・・・顔面等に醜状が残った場合に、14級、12級、7級などの認定を受ける場合があります。
- 鎖骨変形・・・鎖骨骨折後に変形治癒した場合に12級になる場合があります。
- 嗅覚脱失・・・脳損傷の後遺症として嗅覚を失う場合があります。
こういった障害が残った場合は、必ずしも一般人に労働能力の喪失があるとはいえない場合もあるため、 個別の事情により労働能力喪失の有無を判断していく事が大切になってきます。
労働能力喪失期間
労働能力の喪失があった場合は、通常はその喪失期間は労働可能な年数まで計算します。 腕を失ったなどの障害の場合は、その状態が一生継続しますので、このような計算方法となりますが、障害の内容が捻挫などを原因とする神経症状である場合は、必ずしも 生涯継続するものではなく、年と共に慣れていくと考えられている為に、就労可能年数ではなく、2年とか10年とかいう期間を限定して認められる事となります。
ライプニッツ係数
逸失利益とは将来にわたって発生する損害です。それを示談時にまとめて損害賠償を受ける事になりますので、利息分を余計に受け取る事となってしまいます。 そこで利息分を余計に受け取らないように、中間利息を控除した金額を計算する必要があるのですが、そのために用いられているのがライプニッツ係数です。
労働能力喪失説と差額説
後遺障害が残っても、収入に影響のない人もいます。後遺障害が残れば、労働能力の喪失は明らかであるのでそのこと自体で 逸失利益を認めるとするのが労働能力喪失説。あくまでも現実に収入が減少しない限りは逸失利益は認めないとするのが差額説です。
【最高裁判例】
労働能力の喪失自体を損害と考えることができるとしても、その後遺症の程度が比較的軽微で、
かつ被害者が従事する職業の性質から見て現在又は将来における収入の減少も認められない場合は、
特段の事情がない限り、労働能力の喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はない。