自賠責保険の概要

交通事故オンライン損害賠償編

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伊佐行政書士事務所

自賠責保険の特徴

1 強制保険

自賠責保険は自動車損害賠償保障法により、一部の例外を除き、全ての自動車に付けなければならないとされていることから、強制保険とも呼ばれています。 保険金額は傷害について最大120万円、後遺障害について最大4000万円、死亡について最大3000万円となっています。物損(眼鏡等を除く)には保険金はおりません。 自賠責保険は、毎年100万人以上にもなる事故被害者への迅速で公平な保険金支払の為に、簡易な支払基準により計算されており、最低保障という性質が強くなっています。 個別に妥当な損害額を計算して支払ってくれるわけではありません。

車検制度のある自動車は車検と一緒に自賠責保険も更新しますので、保険加入率は高いですが、原動機付自転車はそのような仕組みがないために、 無保険車が比較的多いようです。因みに自賠責保険に加入していないと、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

2 直接請求

加害者に資力がなかったり、不誠実で治療費などを払ってくれないということがあっても、被害者に確実に賠償金が行くように、自賠責保険には被害者請求という制度があります。 これは損害を証明する資料を出せば、加害者の同意などは得る必要はなく、加害自動車の自賠責保険会社に損害賠償金の請求が直接できるというものです。自賠法16条に規定があることから、 16条請求などともいわれています。

3 支払い限度額

自賠責保険では、死亡による損害は最高3千万円まで、後遺障害による損害は4千万円まで、傷害による損害は120万円まで支払われます。車両の物損については保険金は出ません。 これらの金額は被害者一人に対しての金額です。例えば、追突事故の被害者側の自動車に乗っていた4人が傷害を負い、 それぞれが120万円以上の損害を受けた場合は、加害者側の自賠責保険から4人にそれぞれ120万円までが支払われます。 また、加害自動車が2台ある場合は、保険は2台分でます。例えば信号のない交差点で自動車同士で衝突した場合に、 一方の車両の同乗者が怪我をした場合は、その同乗者に対しての加害者が相手車と自車の運転者となる場合は、 同乗者の損害は240万円までが自賠責保険の限度額になります。

4 支払基準

自賠責保険は法律で加入が義務付けられた、被害者保護のための最低限の保険であるということができます。 大量の保険金請求を、一定の基準で迅速に支払う必要があるため、あまり細かく被害者ごとの個々の事情を考慮して損害の計算をするということは難しく、 一定の基準に当てはめて損害額の計算をします。したがって慰謝料を交渉して増額できるというような性質のものではありません。 詳細は自賠責保険の支払基準をご覧下さい。

5 過失相殺

過失相殺とは、被害者にも過失がある場合には、損害賠償額からその過失分に相当する金額を差し引く事をいいます。 一般に90:10とか、被害者の過失3割などと表現されます。一般の損害賠償では公平の見地から被害者に過失が10%でもあれば損害額から賠償金が10%差し引かれますが、 自賠責保険では、その性質上過失相殺はされません。 過失相殺はされませんが、被害者の過失が重いとき(7割以上)には減額がされます。

減額適用上の過失割合死亡・後遺障害傷害
7割未満減額なし減額なし
7割以上8割未満2割減額2割減額
8割以上9割未満3割減額2割減額
9割以上10割未満5割減額2割減額

自損事故などで過失が10割の場合は自賠責保険は免責となり、保険金は支払われません。

センターオーバーの事故

父か事故で亡くなりました。警察によると父がセンターラインをオーバーしたのが原因ということです。 相手の人はトラックで、父の車は軽自動車でしたので、怪我はなかったとのことでした。 お尋ねしたいのは、我が家にはお金がなく、葬儀費用にも事欠く状態です。 父は車の保険に入っておらず、トラックの修理代を請求されて困っている状態です。 自賠責保険は自分で起こした事故には支払われないということのようですが、このようなケースでは、やはり自賠責保険は 支払われないものでしょうか。確認の意味で質問させていただきました。よろしくお願いいたします。

センターオーバーの事故ということですと、お父様に対して自賠責保険が支払われる可能性は低いです。 ただし可能性はゼロではありません。自賠責保険は過失が1割でもあれば支払われます。 センターオーバーというと、ほとんどのケースで100:0となると思いますが、中には相手方に過失が認められるケースもあるのです。 ひとつ例を挙げますと、センターオーバーした側の車が、しばらく走行してから衝突したようなケースでは、 相手方にもわずかに注意を払えば事故を回避できた可能性があるなどのように認定されれば、 センターオーバーした側に自賠責保険が支払われます。

怪我をした加害者の保険金請求

自分の不注意が大きな原因となって事故を起こしてしまった加害者は、負い目を感じて自分の怪我の治療費などを自己負担する人もいらっしゃいます。 自分の過失が大きい場合は、保険会社のサポートも受けられない場合が多く、自賠責保険へ請求ができるにもかかわらず、 やり方がわからないことから、請求を断念している方も多いようです。

自賠責保険は、加害者が怪我をした場合の治療費も請求することができます。加害者の過失が100%の場合は請求できませんが、99%以下の場合には、 何割か減額される可能性はあるものの、治療費のほか、休業損害や慰謝料も請求できるのです。

政府保障事業への請求

自賠責保険は、一部の例外を除き全ての自動車に付保される強制保険として、被害者の救済のために重要な役割を担っています。自賠責保険のおかげで 多くの被害者の最低限の保障は確保されていますが、自賠責保険が使えない場合(ひき逃げ、泥棒運転など)も存在し、そうした被害者のための社会保障的な 救済手段として用意されているのが政府保障事業です。

政府保障事業の内容は、自賠責保険との共通点が多く、填補される上限金額も自賠責の保険金額と同じになっています。

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