休業損害

交通事故オンライン損害賠償編

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伊佐行政書士事務所

休業損害はどのような場合に認められるか

休業損害は事故のために休業を余儀なくされた場合に認められる損害ですが、仕事を休んだからといって必ず認められるというものではありません。 例えば両手を骨折した場合などは仕事が全くできない人がほとんどでしょうから、通院した日もしなかった日も認められるケースが多いでしょうが、 頚椎捻挫などで痛みはあるものの仕事が全くできない状態ではないという場合には、仕事を休んだ場合でも休業損害が認められないようなケースもあるのです。 ケースとして多いのは、頚椎捻挫による休業損害でしょう。保険会社が認める休業日数に納得がいかないという声は多いです。

休業損害の算定の基礎となる収入は、職業により次のとおり計算されます。

給与所得者

事故前の収入を基礎に、受傷によって休業し、減収になった金額が損害となります。基礎収入は一般には事故前3ヶ月の平均が採用されます。 ボーナスの減少についても請求は可能です。事故の為に解雇された場合でも妥当な範囲で請求は可能です。年次有給休暇を使用した場合も損害と認められる場合があります。 公務員の場合、昇給遅れによる損害が認められることもあります。主な立証資料は、休業損害証明書と源泉徴収票です。

例えば事故前3ヶ月分の収入が90万円の人が50日間休業した場合は、90万円÷90日×50日=50万円というように計算します。

【事例】自転車で自動車にはねられ、全身打撲と頚椎捻挫で8ヶ月間通院した被害者がいました。 打撲といっても症状はかなり重く、事故当初は痛みのために歩くこともままならなかったようです。 この被害者は、主に倉庫内で荷物の運搬などを担当しており、数キロから十数キログラム程度の重量物を、常に持ち運ぶ仕事をしていました。 体の痛みのため休業して、休業損害も支払ってもらっていましたが、2ヶ月経過したところで保険会社から「もうそろそろ・・・」といわれたため、 痛みを押して仕事に復帰してみたそうです。しかし、とても仕事を継続できるような状況ではなかったため、すぐにまた休業しました。 しかし、保険会社からは休業損害の支払いはなくなってしまい、何ヶ月か貯金で生活を続けることになったそうです。 ようやく半年後くらいに仕事に復帰できるようになり、通院も終わりになり、示談の話となりました。 被害者の仕事内容、症状の程度などから総合的に見て、休業損害が2ヶ月で打ち切られるのは妥当ではないと思われたため、保険会社に交渉したところ、約5か月分の休業損害まで認めてもらうことができました。

賞与(ボーナス)の減額分

会社に「賞与減額証明書」を発行してもらいます。内容が適正であれば、それで支払われるケースが多いです。 賃金における賞与の比率が高い会社に入社し間もなく事故にあい、長期間休職せざるを得なくなった場合でも、休業損害の計算は月収ベースが基本となります。 ただし休業期間が長期にわたり、総合的に見て賞与が支払われる可能性が高かったという証明が可能であれば、賞与分の請求も可能です。

基本給以外の手当

住宅手当や時間外および休日出勤手当(残業手当)も休業損害として認められる可能性があります。

自主退職と解雇

事故で仕事に影響があり退職しなければならない場合、自主退職することと解雇されることで違いが出ることもあります。 事故後、満足に働けなくなり、会社に居辛くなった、という声を良く耳にします。治療のせいで残業ができず同僚に申し訳ないとか、 作業が遅れて周りに迷惑をかけるのが辛いとかいうのが原因のようです。こういった状況で自主的に退職した場合は、それ以降の休業損害の請求は 困難なケースが多いと考えてください。色々な事情があり、一概にいえる事ではありませんが、状況が許す限りは自主退職せず、解雇という形を とったほうがよい場合が多いでしょう。

怪我の治療中に、その治療を原因として解雇されたり、退職せざるを得なかった場合は、会社を辞めてから、治癒又は症状固定 するまでの間の休業損害について問題になる事があります。 受傷の程度、会社の規模、仕事の内容などから、解雇されたり退職せざるをえなくなった場合で、再就職も困難と認められる場合は、治癒又は症状固定までの 休業損害は認められるべきですが、怪我の程度からすれば働くことが可能であるのに会社を自主的に辞めてしまったり、 働けるのに会社が事故を奇貨として解雇した場合などは、退職と事故との間に相当因果関係が認められず、休業損害を否定される可能性があります。

有給ではない「代休」を使って通院した時の休業損害

これは付与された休日出勤の代休の性質を検討する必要がありますが、単純に考えますと、次のようなことがいえるかと思います。
●通常は休日の日曜日に出勤した。そのために平日に代わりに休める日ができた(これを休日出勤の代休とします)。
●通院のために、代休を1日つぶしたとなると、休業損害が発生するのではないか?
●しかしこの代休は、単に日曜日の休みが移動しただけ。
仮に日曜日に通院した場合を考えてみると、休日に通院しただけでは休業損害は出ないことを考えれば、代休も休業損害は認められないと考えられます。

入社直後の休業損害

入社1ヶ月未満等で源泉徴収票もない、1ヶ月分の給料明細もないということでしたら、会社に何かしらの証明書を書いていただくといいでしょう。 雇用形態によって内容はいろいろだと思いますが、所定労働日数や時給もしくは月給等のことを書いた、 「在職証明書」を雇用主に書いていただく方法が考えられます。

事業所得者

事故前年の申告所得を基礎とするのを原則とします。収入の変動が大きい場合は、数年分の申告所得を参考にする場合もあります。 無申告であっても、相当の収入があったと認められる場合は、賃金センサスを利用して算定する場合があります。 自営業者などの休業中の固定費(家賃や従業員の給料など)は事業の維持存続のために必要やむを得ないものは損害として認められます。主な立証資料は、確定申告書です。

【事例】事業所得者の場合は、給与所得者のように、単純に1日休業したら何円減収になるというようには計算がしにくい面があります。 そのために、会社員に比べると休業損害に不満を持つ人は多いようです。 一人で店舗を経営されている被害者様がいらっしゃいました。店舗内での作業は身体を使う重労働でした。 事故で頚椎捻挫となり、首が回らない、肩が上がらないなどの症状に悩まされていらっしゃいました。 店舗は一人で運営しており、週に1日の定休がありました。痛みで仕事にならないため、本来は休んで治療に専念したいと考えていましたが、 客離れなどが心配なため、店を休むことはせず、早仕舞いするなどして病院に通っていました。 このケースでは保険会社は当初から休業損害については一定の理解を示しており、 店を休んだ日はありませんでしたが、ある程度の金額を提示していました。 しかし細かく見てみると、被害者の計算方法とは若干異なる部分があり、その点を指摘することでわずかではありますが数万円の譲歩が得られました。

申告外所得

実は申告した所得以外にも、もっと所得があったのだという主張を被害者がする場合がありますが、これはなかなか認められません。 その収入を裏付ける資料で十分な立証ができれば認められる可能性もありますが、一般的には難しいと考えられます。 ただし生活状況からみて、到底この申告所得ではないだろうと認められるような場合は、ある程度の休業損害が認められるケースもあるようです。

事業への寄与率

夫婦で事業を営んでいる場合は、実際には夫と妻の労働により事業が成り立っている場合でも、確定申告は夫の所得として申告されている場合があります。こうした場合は被害者が事業にどの程度寄与していたかを認定して休業損害額を計算します。 例えば兼業農家で夫の農業所得への寄与度を50%とした例などがあります。

会社役員

会社役員の報酬は、利益配当的な部分は損害とは認められず、労働対価部分のみが休業損害と認められます。 この割合は総合的に判断するしかありませんが、会社の規模、会社内での地位や 職務内容から、全額が労働対価部分と認められるケースもあります。

【事例】「会社役員は休業損害はありません。」と初めから保険会社にいわれていたケースです。 被害者は同族会社の取締役でした。しかし役員であっても常日頃より、ビル清掃管理の現場作業員として働いておりました。 このようなケースでは会社役員であっても、その報酬は、純粋に労働の対価として得ているものであって、 利益配当(特に労働をしなくても、分配される)という性格のものではありませんので、休業損害は認められるべきです。 決算書類などの資料を整理し保険会社に提出したところ、妥当な金額が支払われました。

労務対価部分の算定方法

給与規定の有無や、その役員の職務内容などから判断する場合、賃金センサスを参考にする場合などがあります。 判例では労務対価部分を50%とするものから90%、100%とするものまでまちまちであり、結局は個別に検討して判断するしかないようです。

外国人労働者

就労可能な在留資格を持っている場合は在留期間内であれば日本人の場合と基本的には変わりません。 ですが就労可能な在留資格を持っていない場合や、持っていたがオーバーステイとなっている場合は問題となります。 不法な就労であっても、公序良俗に反するとまではいえない場合は、収入が現実にある以上は、休業損害は認められますが、 個別の事情を検討し、実際に日本で得ていた賃金を基礎に認定するか、 外国人労働者の本国(もしくは出国先)における収入額を基礎とするかが検討されます。

家事従事者(主婦・主夫)

家事労働は、一日何時間働くなどの明確な目安がないために、休業の期間などについて保険会社と意見が一致しないことがよくあります。 収入金額は、女子労働者の平均賃金(賃金センサス)などを基礎に算定されます。なお、家事従事者とは家族の為に家事を行うものであって、 ひとり暮らしで自分の身の回りのことをしているだけでは、家事従事者としては認められません。

家事従事者の休業損害の計算方法

まず単価ですが、事故年や事故前年の賃金センサスの学歴計全年齢女子平均賃金を使うのが一般的です。 次に休業日数の決め方ですが、骨折など重症で、家事が全くできない状態の場合は、 家事ができるようになるまで(必ずしも治癒や症状固定日とは一致しません。)の期間の全日数分が認められることが多いです。 打撲や捻挫などで、支障はあるが、家事が全くできないわけではない場合は、実通院日数分が認められたり、 稼働状況に応じてその50%だけ認められたりします。

有職主婦の場合

給料などの現実収入があり、家事も行っている場合は、現実収入が賃金センサスの平均賃金を超える場合は、現実収入により休業損害を計算します。 そうでない場合は、賃金センサスにより認定されます。現実収入分と家事労働分を二重に受け取ることは、通常はできません。

主婦の休業損害と家政婦費用、保育費の関係
小さな子供を持つ母親が交通事故で怪我をした場合に、通院の為、幼児を保育所に預けたりして現実の出費が伴う場合があります。 主婦が受傷して家事労働に支障があった場合は、休業損害という形で損害が填補されますので、家政婦代や保育費については、 休業損害に含まれていると考えられ、通常のケースでは二重に請求する事はできないと考えることができます。ただし、家事労働の休業損害の評価が 低い場合などは、保育費用などは別と考えられるケースもあるでしょう。

【事例】頚椎捻挫で8ヶ月通院した主婦について、 当初保険会社の提示は約3か月分の通院日数を基礎とする20万円という金額でしたが、 請求資料により約60万円の支払いを受けられたケースや、上腕骨の骨折をした主婦について、 当初保険会社は休業損害の支払提示をしていませんでしたが、 請求資料により、約100万円の支払いが受けられたケースなどがあります。

子供の監護費は認められる?

Q 私が通院するときに、2歳の子の面倒を見てもらうために、実家から母に泊りがけで来てもらっていました。 母は実家で父と二人暮らしの専業主婦ですが、母の休業損害は請求できますか?父は何もできない人で、母に来てもらっている間、全て外食をしていたそうです。洗濯物も溜まりっぱなしなので、母にとても負担をかけてしまいました。

A 損害として認められる場合もありますが、怪我の程度やお子さんの年齢、その他の事情をふまえ、ケースごとに妥当性を 考える必要があります。お怪我が重傷の場合は認められやすいと思います。 しかしむち打ち症などであなた自身は家事はできるが、ついでにお母様に手伝ってもらっていたなどの状況の場合は、お母様の行動は親族の愛情から行っていたものとして、損害とは認められない可能性もございます。

無職者

失業中の者には原則として休業損害は発生しませんが、就職が決まっているなど、職に就く可能性が高かった場合は認められる場合もあります。学生や生徒など 就労していない者にも休業損害は認められません。アルバイト収入がある場合は認められます。 治療の為に卒業、就職が遅れた場合には遅れなければ得られたはずの給与額が損害となります。

失業給付などを受けており求職活動中の人の場合は、現在のお怪我の程度が一般的に見て就職活動をしている職種に影響があることが明らかで、 且つ事故がなければすぐにでも就労の可能性が高いといえたのであれば、休業損害の請求が可能なケースもあるかと思います。

短期就労者(パート、アルバイト、短期派遣など)

就労の実態に合わせ合理的な計算方法を取ります。

バイト契約終了後の休業損害の事例

私は月~金曜日のメインの仕事と土日祝日のバイトをしていました。 両方とも休まず勤務していた際、車とぶつかりました。 よく通院のための欠勤は休業損害でカバーできるとど の交通事故本にも記載されていますが、100%通院中 の給料の支払いは無理だろうと思い、私は通院中も殆休 まず勤務していました。何故なら私は派遣のため休めば 無給になるからです。 通院1ヶ月後位に土日祝日のバイト契約が終了になりました。その後他のバイ トを探すも見つかりません。(毎週土曜日に通院しているので 土日のバイト募集で毎週土曜日を休まれるのは困るとの理由です。) 上記のように通院中に契約終了となった場合でも休業損害請求できるのでしょうか?

契約終了となったことについては事故と因果関係がありませんので、終了後次の職につけなかった場合でも、 症状固定までの休業損害を請求することは困難です。 仮にこれが契約終了ではなく、事故による欠勤が多いことなどを原因とする解雇などであれば、 請求の余地はあるものと考えられますが、その場合でも、解雇以前の勤務状況が休業損害を発生させずに 済むような実態があった場合は、請求は難しいのではないかと思います。

パートの内定を取り消された事例

はじめまして。3月に事故に遭ったのですが、翌月からパートで働くことが決まっていました。むち打ちで体調が悪く、仕事を始める予定だった日から3週間ほど 休ませていただいたところ。「代わりの人を雇ったから、もう来なくていい」といわれました。むち打ちは3ヶ月くらいで治ったのですけど、保険会社は休業損害は払えないといっています。 私としては、事故がなければパートで現金収入があったはずですので、通院していた3ヶ月分はもちろん、次のパートが見つかるまでの分は補償してもらいたいのですが、可能でしょうか。

A 内定期間中の事故でも、治療期間中の休業損害は請求可能です。会社に休業損害証明書を書いてもらってください。 会社に休業損害証明書を書いてもらえないときは、雇用契約書等の資料により交渉することになります。 治療が終わった後の分は、通常は認められることはないと思っていいでしょう。

フリーターの休業損害の計算

私はフリーターをしています。事故の前は一日3時間のアルバイトをしていて、時給は1100円でした。事故のために1年間働けなかったので、 休業損害を請求したいのですが、どういう計算をすればいいのでしょうか。保険会社は一日5700円で3か月分支払うと云っています。

A お怪我の程度や、お仕事の内容などによりいろいろな考え方ができますので「こう計算すればいい」と断言できるものではありません。お仕事の内容やけがの程度からして、1年間の休業が やむを得ないと認められる場合、たとえばお怪我が骨折で、お仕事が肉体労働などの場合であれば、事故前の月収×12か月分という式で計算することもできます。 そうではなく、お怪我が頚椎捻挫などで、お仕事も事務系のものである場合は、いくら実際にアルバイトを休んだからといっても、本当に働くことができなかったのか疑義がある場合には、3カ月程度しか 休業損害が認められない場合もあります。

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