1. ひと目でわかる ~慰謝料の基準別早見表
  2. 少し詳しく ~むち打ち症の慰謝料計算例
  3. 難しい計算が誰でもできる ~慰謝料計算シート
  4. 実務に役立つ ~慰謝料増額の知識
  5. 後遺障害慰謝料の計算
  6. 死亡慰謝料の計算

ひと目でわかる ~慰謝料の早見表

(1)通院のみの場合の慰謝料早見表

通院期間頸椎捻挫などの軽傷用骨折などの重傷用
任意保険基準
慰謝料額
弁護士基準
慰謝料額
任意保険基準
慰謝料額
弁護士基準
慰謝料額
※ 使用例:むち打ち(頚椎捻挫など)で6ヶ月通院した場合の慰謝料は、任意基準で64万円、弁護士基準で89万円となります。
3ヶ月38万円53万円49万円73万円
4ヶ月48万円67万円62万円90万円
5ヶ月57万円79万円73万円105万円
6ヶ月64万円89万円83万円116万円
7ヶ月71万円97万円91万円124万円
8ヶ月77万円103万円100万円132万円
9ヶ月82万円109万円106万円139万円
10ヶ月87万円113万円113万円145万円
11ヶ月91万円117万円118万円150万円
12ヶ月93万円119万円121万円154万円

※通院期間とは・・・事故日から治癒した日(または症状固定日)までの期間をいいます。但し入院した期間を除きます。

(2)入院後、通院した場合の慰謝料早見表

入通院期間
(ヶ月)
骨折など重傷用入通院期間
(ヶ月)
骨折など重傷用
任意保険基準
慰謝料額
弁護士基準
慰謝料額
任意保険基準
慰謝料額
弁護士基準
慰謝料額
※ この数値は大体の慰謝料金額を把握していただくために例示したものです。
入院0.5
通院3
63.8万円94万円入院1
通院3
78.5万円115万円
入院0.5
通院4
76.2万円110万円入院1
通院4
90.2万円130万円
入院0.5
通院5
86.8万円123万円入院1
通院5
99.8万円141万円
入院0.5
通院6
95.8万円132.5万円入院1
通院6
108.1万円149万円
入院0.5
通院7
104万円140.5万円入院1
通院7
116.2万円157万円
入院0.5
通院8
111.4万円148万円入院1
通院8
123万円164万円
入院0.5
通院9
118万円154.5万円入院1
通院9
129.5万円170万円
入院0.5
通院10
123.7万円160万円入院1
通院10
134.4万円175万円
入院0.5
通院11
127.9万円164.5万円入院1
通院11
137.7万円179万円
入院0.5
通院12
131.1万円168.5万円入院1
通院12
140.9万円183万円

少し詳しく ~むちうち症の慰謝料計算例

1.慰謝料表による計算

計算前の準備

(1)慰謝料表の選択

関東では赤い本、それ以外の地方では青本の慰謝料表が用いられるのが一般的です。

(2)重症度の判断

打撲や捻挫、挫創程度の怪我を軽傷、複雑骨折や脊髄損傷などは重傷、単純骨折や靭帯断裂などは通常の傷害とします。むち打ち症は捻挫ですので、一般的には症状が重くても軽症に分類されます。

(3)治療期間の算出

入院期間は例えば1月1日から1月10日までなら10日間、通院期間は例えば1月1日から5月31日までの間に60日通院した場合は151日間となります。通院した60日ではなく、あくまでも通院した期間の日数を数えて下さい。

次に下の慰謝料表をご覧ください。 ここでは関東地方でよくつかわれている赤い本の慰謝料表を使用します。別表Ⅰと別表Ⅱがありますが、捻挫や打撲などの軽傷の場合は、こちらの別表Ⅱを使います。 怪我が軽い分、精神的苦痛も少ないと考えられるため、金額が低く設定されています。 骨折など通常以上の傷害は、別表Ⅰを使ってください。

入院および通院期間それぞれに該当する月数が交差するところの数字が慰謝料の金額となります。
(※)計算方法の説明のため、部分的に引用しています。表の内容を全て知りたい方は赤い本を購入されるか、弁護士に相談してください。

赤い本(日弁連交通事故相談センター東京支部 損害賠償額算定基準) 別表Ⅱより引用
(万円)入院1月2月3月4月5月
通院356692116135
1月195283106128145
2月366997118138153
3月5383109128146159
4月6795119136152165
5月79105127142158169
6月89113133148162173
7月97119139152166175
8月103125143156168176
9月109129147158169177
10月113133149159170178
11月117135150160171179
12月119136151161172180
13月120137152162173181
14月121138153163174182
15月122139154164175183

むち打ち症で入院する人はあまりいませんので、計算はとても簡単です。通院した期間の横にある数字が慰謝料の金額になるのです。例えば 6ヶ月通院した人は89万円です。12ヶ月通院した人は119万円という具合です。ただこれだけです。 1ヶ月入院してから6カ月通院した場合は、113万円ということになります。 細かい端数の計算方法は、慰謝料計算シートにわかりやすく説明してあります。

2.実際の慰謝料認定金額

実務では慰謝料表の金額とおりで示談できる場合もあれば、事情により金額が増減される場合もあります。 ここでは実際の認定例を、通院期間ごとに整理してご紹介します。意外とバラバラなのがお分かりいただけると思います。

実務の慰謝料認定金額(裁判例および紛争処理センター裁定例より)
(万円)赤い本
基準
例1例2例3例4例5例6例7例8
通院4ヶ月 ±10日676775757070848065
通院5ヶ月 ±10日797080506765909080
通院6ヶ月 ±10日89801001009080778590
通院7ヶ月 ±10日97901009010086909087
通院8ヶ月 ±10日1031109590120601009590
通院9ヶ月 ±10日109801001201001067096100
通院10ヶ月 ±10日11312511290100111101100110
通院11ヶ月 ±10日1171201201106012098103110
通院12ヶ月 ±10日11913590125106110100100120

一般に、自己流で保険会社と交渉するだけでは、慰謝料表の金額より何割か少ない金額しか保険会社は認めようとしません。弁護士に頼るか、紛争処理センターなどを利用すると、慰謝料表に近い金額が支払われる可能性が高くなります。

難しい計算が誰でもできる、慰謝料計算シート

「交通事故で入通院した慰謝料はいくらになるの? 実際の計算手順がわからない。計算根拠が説明できない。」 そんな方のために作りました。 自動計算機では理解できない計算過程もわかるため、示談交渉に用いると説得力があります。 印刷してお使いください。

慰謝料計算シート

※入通院慰謝料を計算するためのシートです。後遺障害・死亡に関する慰謝料は該当ページをご覧ください。

ダウンロードにはアドビリーダーが必要です。 

慰謝料計算シートの使用例

計算事例(1) ~ 頚椎捻挫。通院期間190日間、実通院日数115日の場合
(1)通院期間を30で除して月数に換算します。190日であれば190÷30=6.33ヶ月となります。
(2)入通院慰謝料表を見て、通院期間に対応する月数の慰謝料金額を求めます。 赤い本の別表Ⅱの場合は6ヶ月=89万円が対応する数字となります。
(3)月に満たない日数分を別に計算します。通院期間が6.33ヶ月だったとすると、 6ヶ月と7ヶ月の慰謝料の金額の差に0.33を乗じて求めます。 赤い本の別表第Ⅱの場合は(97万-89万)×0.33=2万6666円となります。
(4)入院期間がある場合はここで計算を行いますが、本例では入院していないため、0を書きこみます。
(5)月に対応する金額と、月に満たない日数分を加算したのが通院慰謝料の金額となります。89万円+2万6666円=91万6666円。
慰謝料表別表Ⅱ
計算事例(2) ~ 腰椎捻挫。通院期間360日間、実通院日数40日の場合
(1)実通院日数が少ない場合は、実際の通院期間ではなく、修正した通院期間をもとに計算する場合があります。 修正通院期間は実通院日数×3.5(他覚的所見のないむち打ちなどの場合は×3)で計算します。 目安としては週に2日未満の通院の場合に修正通院期間を用いるケースがありますが、実通院日数が少ないからといって、一律に修正通院期間を用いた計算方法が 採用されるわけではありません。
(2)実通院日数を3倍して修正通院期間を求めます。40日×3=120日間。
(3)修正通院期間を30で除して月数に換算します。120日間は4ヶ月となります。
(4)入通院慰謝料表を見て、通院期間に対応する月数の慰謝料金額を求めます。赤い本の別表Ⅱの場合は4ヶ月=67万円が対応する数字となります。
(5)月に満たない日数分がある場合は、別に計算します。この例では端数ありませんので、67万円が事例の慰謝料額となります。
計算事例(3) ~ 全身打撲。入院期間75日間、通院期間240日間、総治療期間315日間の場合
(1)治療期間を30で除して月数に換算します。315日であれば10.5ヶ月ということになります。 治療期間とは入通院を合算した治療期間のことです。2.5ヶ月入院した後に8ヶ月通院した場合は、10.5ヶ月間となります。
(2)入通院慰謝料表を見て、治療期間に対応する月数の慰謝料金額を求めます。 赤い本の別表Ⅱの場合は113万円が対応する数字となります。
(3)治療期間に月に満たない日数があれば、別に計算します。治療期間が10.5ヶ月だったとすると、 10ヶ月と11ヶ月の慰謝料の 金額の差に0.5を乗じて求めます。赤い本の別表第Ⅱの場合は (117万-113万)×0.5=2万円となります。
(4)次に入通院慰謝料表を見て、入院期間に対応する月数の入院慰謝料金額を求めます。2ヶ月の入院だと、 赤い本の別表Ⅱの場合は66万円が対応する数字となります。
(5)入院期間に月に満たない日数があれば、別に計算します。入院期間が2.5ヶ月だったとすると、 2ヶ月と3ヶ月の入院慰謝料の 金額の差に0.5を乗じて求めます。赤い本の別表第Ⅱの場合は( 92万-66万)×0.5=13万円となります。
(6)次に入通院慰謝料表を見て、入院期間に対応する月数の通院慰謝料金額を求めます。2ヶ月の入院だと、 赤い本の別表Ⅱの場合は36万円が対応する数字となります。
(7)入院期間に対応するの月に満たない日数分の通院慰謝料を計算します。入院期間が2.5ヶ月だったとすると、2ヶ月と3ヶ月の通院慰謝料の 金額の差に0.5を乗じて求めます。赤い本の別表第Ⅱの場合は(53万-36万)×0.5=8.5万円となります。
(8)治療期間の慰謝料(例10.5ヶ月=115万円)+入院期間の慰謝料 (例2.5ヶ月=79万円)-入院期間に対応する通院慰謝料(例2.5ヶ月=44.5万円)=入通院慰謝料(例149.5万円)となります。
慰謝料表別表Ⅱ
計算事例(4) ~ 外傷性頚部症候群。通院期間20ヶ月、実通院日数250日の場合
(1)慰謝料表は15ヶ月までしか記載されていません。15ヶ月を超える期間入通院した場合は、1ヶ月毎に15ヶ月と14ヶ月の慰謝料の差額を加算します。 15ヶ月(122万円)-14ヶ月(121万円)=1万円 となります。
(2)15ヶ月分の慰謝料は122万円です。
(3)16ヶ月目から20ヶ月目までの5ヶ月間の慰謝料は5×1万円=5万円です。
(4)20ヶ月分の慰謝料は、122万円+5万円=127万円となります。
自賠責保険の入通院慰謝料計算手順
(1)治療期間の起算日を確定します。初診日が必ず起算日となるわけではありません。初診日が事故発生日から7日以内の時は事故発生日が 起算日となり、初診日が事故発生日から8日以降の時は初診日から7日前の日が起算日となります。
(2)治療期間の最終日を確定します。治療最終日の転帰が「治癒」の場合は治療最終日が最終日となり、「中止」「継続」「転医」 の場合は治療最終日に7日を加算した日が最終日です。起算日から最終日までが治療期間となります。
(3)実治療日数を確定します。入院した日数、通院した日数、ギプス装着日数(入院日、通院日の重複分は除く)の合計が実治療日数です。
(4)慰謝料の対象となる日数を求めます。実治療日数の2倍が対象日数となりますが、上限が治療期間の日数までとなっています。 つまり実治療日数の2倍が治療期間の日数を超える場合は、治療期間の日数までで打ち切りとなります。
(5)対象日数に4200円を乗じた金額が、自賠責保険の慰謝料金額です。ただし傷害についての自賠責保険限度額は120万円ですので、 治療費や交通費、休業損害、慰謝料などの合計が120万円を超える場合は、120万円で打ち切りとなります。

慰謝料計算シート ご利用上の注意

修正通院期間や、特に重症の場合の注意点など。

(1)計算シートは、弁護士基準の慰謝料表や自賠責保険傷害慰謝料の計算が簡単にできるように工夫したものですが、計算結果がどのようなケースにおいても 妥当な慰謝料金額となるということではありません。あくまでも目安としてお考えください。

(2)実通院日数が週に2日未満の場合は、軽傷用の場合は3倍、通常用の場合は3.5倍した値を治療期間とする場合があります。 これを修正通院期間といいますが、傷病の種類や程度などから修正を行わない場合もあります。例えば大腿骨幹部骨折などの治療は、経過観察で月に1~2回の 通院という事も多いですが、一般的な症状経過をたどっている場合は、修正通院期間に直す計算方法を取らないことが多いです。

(3)特に重症の場合は、慰謝料の金額を1.2~1.3倍する場合があります。 絶対安静の期間が長いなど生命が危ぶまれた場合や、大手術を繰り返した場合などが該当します。

(4)1ヶ月を30日として計算します。 通院した期間が1月1日から翌年の12月31日まででしたら、通院期間は365日(うるう年の場合は366日)となり ますので、表に当てはめる時は12ヶ月と5日(6日)で計算します。ちょうど1年だからといって12ヶ月では計算しません。

(5)弁護士基準は赤い本(東京三弁護士会基準)と青本(日弁連基準)が有名ですが、他にも黄色い本(名古屋基準)、緑の本(大阪基準)といったものが 存在しています。

実務に役立つ ~慰謝料増額の知識

慰謝料請求と支払いの時期

傷害慰謝料は、怪我の程度と入通院期間によって基準額が変わってきます。 事故直後に全治10日と診断された場合でも、実際はそれ以上の期間通院することが多いので、10日間分で慰謝料を計算するのではなく、治療が終わった時点で、実際の入通院期間(事故から症状固定日または治癒日まで)を基に計算し、請求します。 治療が終わる前に相手方に慰謝料を請求しても、通常は支払われません。

慰謝料は弁護士基準で計算しよう

「三つの慰謝料基準」のことは置いておき、先ずは弁護士基準のことだけ理解しましょう。大雑把ないい方をすれば、 「妥当な金額(相場)」=「弁護士基準の8~10割程度」と見ることができるからです。

※三つの基準とは・・・自賠責、任意保険、弁護士会でそれぞれ独自に定めた算定基準の事です。 それぞれに特徴があり、慰謝料の金額も異なります。 交通事故の損害賠償請求について深く勉強する場合はそれぞれの理解も大切ですが、一般的な被害者が苦労して理解する必要はありません。

※ここでは相場として8~10割としましたが、10割以上の請求も可能です。ただし示談による解決では難しいでしょう。

慰謝料増額の方法は?

慰謝料の金額を少しでも弁護士基準に近づけるには、ポイントを押さえたやり方をすることが必要です。 精神的損害の大きさを客観的に説明することは困難ですが、慰謝料の計算において、その説明が不要という事ではありません。 どれだけの精神的苦痛を受けたのか明らかにすることは、最も基本的なポイントといえるでしょう。

先ずは苦痛を可視化することを考えましょう。苦痛には痛み・不便・悲しみ・喪失など様々なものがありますが、 それらを具体的に書き出してみてください。 痛みのために仕事ができなかったのであれば「できなかったこと」「周りに迷惑をかけたこと」 「いつまで続いたか」などの事実を整理することにより、 交渉の相手方に苦痛の大きさを伝えることができます。そしてそれが慰謝料算定の基礎となります。

特殊な事情がある場合

慰謝料は1円単位で正確に出さないといけない?

訴訟でも実際に請求される金額はまちまちです。基準とおりに計算した金額を1円単位で請求する人もいますし、98万5千円を100万円とするように数字を丸めて請求する人もいます。計算式を記載して請求すれば説得力がありますが、自信がない場合は「赤い本の基準を参考に100万円を請求する」というように計算式抜きで請求してもよいのです。

通院が少ない場合の修正

通常は「実通院日数」とは無関係に「治療期間」で慰謝料を計算しますが、治療期間と比べて、実際に通院した日数が極端に少ない場合は修正を行う場合があります。 週に2日未満の通院しかない場合が修正を行う目安です。実通院日数を3倍した数字を治療期間とみなして計算します。詳しくは前述の「慰謝料計算シートの使用例 事例2」をご覧ください。

斟酌事由がある場合

事故のために被害者が退職や廃業、留年や昇進遅れ、離婚を余儀なくされた場合や、加害者が飲酒運転など悪質性が高い場合は、慰謝料が増額される場合があります。

入院が二回以上にわかれている場合

事故後、骨折部分をボルトで固定するために入院し、骨癒合後に抜釘のために再度入院するケースがあります。入院を1ヶ月連続してする場合と、20日間と10日間に分けてする場合とでは、慰謝料の計算に差を設けるべきでしょうか。一般的には特に差は設けず、20日+10日で入院1ヶ月として計算されているようです。被害者としては入退院の準備などに余計な手間はかかりますが、一連の治療期間における入院である以上は、第二の入院であることを理由に逓減率をリセットして入院期間別に計算する方法は適切とはいえないと思われます。

満床のため入院待機状態だった場合

入院が必要な状態であるのに医療機関の都合で自宅待機となり、後日入院となった場合、待機期間は入院期間とすべきでしょうか、それとも通院期間とすべきでしょうか。入院と通院の慰謝料で差が設けられているのは、肉体的苦痛の程度や、病院に拘束されることによる行動の制限、プライバシーの低下などに差があることに由来すると考えられます。満床でやむなく自宅待機をしている期間については、自宅にいても入院時と変わらない肉体的苦痛や行動の制限を受けているものと推測できますし、むしろ緊急時の対応ができないことへの不安など、精神的苦痛は大きくなるケースも考えられることから、入院期間として計算すべきと思われます。ただし入院待機が主に本人や家族の希望によるものである場合は、通院期間として計算すべき場合もあるでしょう。

被害者の事情で早期退院した場合

育児・介護・仕事等のやむを得ない事情のために入院期間を短くしたと認められる場合は、慰謝料表により計算した金額を増額することがあります。 傷病の程度から一般的に必要とされる期間から極端に短い入院期間であること、やむを得ない事情があること、 早期退院により苦痛を蒙ったことなどの条件が揃った場合に限られると思われます。

ギプス装着期間

ギプス装着期間は入院期間として算入する場合があります。長管骨や脊柱にギプスを装着し、自宅安静を要する場合などは入院期間とする傾向にあります。 頸椎カラー、クラビクル(鎖骨)バンド、バストバンドなどの装着は、入院期間として参入されることはありません。

毎日通院していた場合

中には半年もの間、週に6日通院していたというケースもあります。症状が強ければ通院頻度が高くなるという考え方もできますが、 症状が強いからといって医学的に毎日治療の必要性があるとまでは必ずしもいえません。合理的な理由があって医師の指示のもと毎日の通院を余儀なくされ、 そのために入院に匹敵するような不便や負担を強いられたなどの場合は、慰謝料の増額事由として考慮する余地もあると思われますが、 むち打ち症などによる症状で、主に被害者の希望により毎日通院をしていたに過ぎない場合は、通常の慰謝料の計算方法が取られるだけで、増額事由とはならないと考えてよいでしょう。

複数の科にかかっていた場合

捻挫や骨折で整形外科にかかるのと並行して、形成外科、歯科、脳神経外科などでも治療を行う場合があります。別々の日に通院する場合もあれば、同じ日に複数の科で治療を受ける場合もあるでしょう。 通院に奪われる時間や症状により受ける苦痛は、一つの科にかかっているだけの場合よりも多くなりますが、 慰謝料表を用いた計算は、一つの科にかかっている場合と同様に計算します。その上で症状経過や治療内容を考慮し、特に苦痛が大きかったと認められる場合は基準より高い慰謝料が認められる場合もあります。

通院を中断していた場合

様々な事情により通院を中断せざるを得ない場合がありますが、やむを得ない事情の場合は慰謝料の計算上、中断期間について不利に扱わない場合もあります。

仕事が忙しくて通院が中断した場合は、やむを得ない事情と認められる可能性は低いです。出張が続いたなどの事情があれば考慮される可能性もありますが、 基本的には「通院の必要がなかった」とみられることになるでしょう。妊娠・出産や海外旅行などのために中断した場合は、 やむを得ない事情として考慮される可能性が高いですが、中断前後の通院状況や、中断した期間の長さによっても判断は異なるものと思われます。

治療器等による自宅療養の場合

むち打ち症などで低周波治療器等による自宅治療が行われる場合があります。 こうした行為は基本的には医師の治療とは別の、補助的な健康維持行為として捉えるべきです。 そのため慰謝料の計算において治療日数として認められる可能性は低くなります。 ただし医師の指示により行っていたなどの事情がある場合は、斟酌される場合もあるでしょう。 スポーツクラブでの水中ウォーキングなどのリハビリも同様に考えます。

海外で通院していた場合

日本の医療と同様に、西洋医学による治療を受けていた場合は、日本における治療と同じように考えればいいでしょう。 民間療法については、日本で一般に認知されている治療法とはいえないため、治療日数としてはカウントされない可能性が高いでしょう。

海外での通院について、治療費や慰謝料を請求する場合は、日本の診断書等に準じた証明書類が必要となります。 領収書だけでは、交通事故による怪我による治療なのか、どのような治療がなされたのかわからないため、損害賠償請求は認められない可能性が高いです。

続けて事故に遭った場合

例えば1月に追突事故に遭い、その治療中、5月にまた追突事故に遭い同じ部位を怪我して通院が長引いたというときは、慰謝料はどのように計算されるべきでしょうか。 第一事故と第二事故の慰謝料を別々に計算する方法と、第一事故と第二事故を通算する方法が考えられます。異なる部位を怪我した場合は、別々に計算する方が妥当というケースが多いでしょうが、全く同じ部位を怪我した場合は、両方の事故を一つのものとして計算したほうが妥当というケースも出てくると思います。 これは一概に決められることではなく、第一事故による怪我の回復の程度と第二事故による増悪の程度などを総合考慮し決めることになるでしょう。

後遺障害慰謝料の計算

後遺障害慰謝料は、表に記載されている等級に該当する金額を見るだけです。 14級の人は110万円、12級の人は290万円という具合です。
(※)計算方法の説明のため、部分的に引用しています。表の内容を知りたい方は赤い本を購入されるか、弁護士に相談してください。

赤い本 後遺障害慰謝料
第1級*万円
第2級*万円
第3級*万円
第4級*万円
第5級*万円
第6級*万円
第7級*万円
第8級*万円
第9級*万円
第10級*万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

目標金額は、こうして出した金額の8~10割ということになります。 実務では基準を参考に、障害内容が生活や職業に与える影響、年齢、性別等を考慮して金額が決められています。

後遺障害等級は、認定手続きを経て認定されるものです。症状固定となっても後遺症が残っている方は、認定の手続きを行ってください。

死亡慰謝料の計算

死亡慰謝料は、被害者の家庭における地位によって金額が分けられていますので、表の該当する金額を参照します。

一家の支柱とは父親や夫であることが多いでしょうが、経済的な支柱となっていれば、 母親や長男長女という事もあるでしょう。配偶者とは、ここでは子のない妻や、支柱でない夫などを指すと考えられます。 その他とは、独身の男女、子供、高齢者などを指します。

実務では基準を参考に、加害者の悪質性等を考慮して金額が決められています。 例えば加害者に過労運転、救護義務違反があったり、凄惨な事故だった場合は基準以上の金額が認められやすいといえましょう。

赤い本 死亡慰謝料表
一家の支柱2,800万円
母親・配偶者2,500万円
その他2,000~2,500万円

一家の支柱と母親・配偶者の基準は、赤い本では金額の幅が設けられていませんが、 これは基準額はあくまでも一つの目安に過ぎないという考え方に基づくものです。 基準額に幅を設けることは、逆にその幅の中に金額を収めなければならないという誤解を生むことになるからです。 実務では、個別事情により、基準額にとらわれない金額の認定が行われています。

赤い本のこうした考え方に対して、青本では基準額に一定の幅が設定されています。 そして原則としてその幅の中で金額が決定されています。