飲酒運転の厳罰化

飲酒運転による重大事故が後を絶たないことから、厳罰化がすすんでいます。2007年には、 これまで自動車事故は業務上過失致死傷罪が適用されていたものが、 自動車運転過失致死傷罪が適用されることとなり、刑の上限もより重いものとされました。道路交通法改正では、飲酒運転者本人のみでなく、酒類を提供した者や 飲酒運転車の同乗者にも罰則が適用される場合があるようになりました。社会的にも飲酒運転に対する見方は、年々厳しくなってきており、飲酒事故により、 懲戒などで職を失う加害者は、今後増えていくものと予想されます。

それでは、加害者が飲酒運転だった場合、慰謝料の金額などにはどのような影響があるのでしょうか。

修正要素としての飲酒運転

過失相殺率の認定基準では、加害運転者が飲酒運転だった場合は、著しい過失または重過失として、 相殺率の認定上、修正要素として考慮されることとなっています。

  • (1)酒気帯び運転の場合は、著しい過失とされ、事故態様により異なりますが、概ね10%程度の加算がされます。
  • (2)酒酔い運転の場合は、重過失とされ、事故態様により異なりますが、概ね20%程度の加算がされることとなります。

そもそも飲酒運転は道路交通法で禁止されていること、注意力や判断力が衰えるため、事故を惹起しやすくなることから、過失を重く問われるのは 当然のことです。「一杯飲んでいただけで、もう醒めていた」は通用しないものと心得ましょう。

慰謝料の斟酌事由としての飲酒運転

慰謝料の金額は、裁判所が各場合における事情を斟酌し、自由な心証をもって定めるものと考えられています。 ある事故で慰謝料を考えるにあたり考慮すべき要素は、例えば、通院期間や傷病の程度のほか、被害者の年齢、職業、家族構成、結果の重大性など、いろいろと考えることができます。 従って、飲酒運転という事実のみで具体的にいくら加算されるなどの定めや基準はなく、総合的に判断されていると考えられます。 飲酒運転の中でも、飲酒の程度、反復性などが考慮される余地もあるものと考えられます。悪質性の高い死亡事故などでは、慰謝料が数百万円加算される事もあるでしょう。

意識の変化

昭和のころと現在とでは、飲酒運転に対する社会の考え方は、ずいぶん変化してきたのではないでしょうか。 もちろん昭和の時代も、飲酒運転は絶対にしてはならないことでしたが、 「乾杯しただけだから」、「すぐそこだから」などという場合には、多くの人たちが罪の意識を持たずに、酒気帯び運転をしていたのではないかとも思われます。 飲酒運転による悲惨な事故が増えるにつれ、社会の目は次第に厳しくなり、法律も厳しい方向に改正されました。 現在は本人の問題だけでなく、飲ませる方、一緒に飲む方も飲酒運転を とがめるのが当たり前というような風潮になってきています。今後も飲酒運転に対する厳しい見方は、緩まることはないでしょう。 飲酒運転の反社会的な色彩が強まれば、慰謝料の金額も斟酌される幅は大きくなっていくものと考えられます。

  • ▼ 事例・判例
  • □ 29歳一家支柱の死亡慰謝料の算定につき、加害者が飲酒、無免許、ひき逃げであったことから2400万円を認めた事例。(平成5年)
  • □ 64歳男子(家族構成、妻、子3人うち一人は大学生)の死亡慰謝料算定につき、加害者が飲酒で一方的過失による事故だったことから2200万円を認めた事例。(平成3年)
  • □ 71歳男子の死亡慰謝料の算定につき、加害者の飲酒、速度超過があったことから1800万円が認められた事例。(平成2年)
  • □ 5歳女児の死亡慰謝料算定につき、加害者の大量飲酒、赤信号無視などから2800万円が認められた事例。(平成15年)
  • □ 18歳男子の死亡慰謝料算定につき、加害者の飲酒による意識もうろう状態、センターオーバーなどから3000万円が認められた事例。(平成17年)
  • □ 22歳男子大学生の死亡慰謝料算定につき、加害者の飲酒、居眠りによる追突から3000万円を認めた事例。(平成22年)