1. 交渉して増額させよう
  2. 自分で交渉してみよう
  3. 上手な慰謝料請求の7つのポイント
  4. 交通事故紛争処理センターや裁判所の利用

交渉して増額させよう

示談交渉を上手に行うには、残念ながら簡単な方法というものはありません。 損害賠償額の計算方法や裁判例などの「情報を収集してまとめる能力」や「経験と正しい知識」が必要です。

なぜ慰謝料が増額するのか

はじめに「交渉によって慰謝料がなぜ増えるのか」を理解しましょう。 これは保険会社の提示額が裁判等で認められる適正額より著しく低い金額であるからです。 増えるというよりも、低い金額を適正額にするといった方がいいでしょう。

保険会社は決まりごと(約款)に従って保険金を支払います。約款を見てみると「加害者の負担する法律上の損害賠償責任」について支払い責任を負う、 というようなことが書かれています。つまり法律上の損害賠償責任の内容が確定すればその金額を払います、という事です。具体例で考えてみましょう。 事故でむち打ち症になり14級の後遺障害が残ったとします。保険会社は治療費、休業損害、慰謝料、逸失利益などを計算して提示してきます。それが100万円だったとします。この100万円というのは、保険会社が自社基準で計算した金額であって、「法律上の賠償責任」の金額とは一致しません。

そこで金額を不満に思う被害者は、自分で弁護士基準などで妥当な金額を計算します。この金額が200万円だったとします。 この200万円というのも「法律上の賠償責任」をあらわす金額ではありません。

「法律上の賠償責任」の金額は、(1)示談により決めた金額や(2)調停や訴訟で確定した金額のことをいいます。つまりお互いに譲歩し合うなり、 裁判なりで法律上の手続きを踏んで決まった金額なら支払う、という意味なのです。「法律上の賠償責任の金額」=「弁護士基準の金額」ではありません。 保険会社の人に「弁護士基準というものがあるのだから、それで支払え」と請求しても、相手にされないのはそのためです。 

自分で示談交渉してみよう

比較的簡単に解決できそうな例としては、追突されむち打ちで4ヶ月くらい通院して、後遺症も残らずに完治した場合などが考えられます。 任意保険会社からは慰謝料を35万円支払いますといわれているとしましょう。

まず、弁護士基準でいくらになるか確認します。赤い本の別表Ⅱによれば、4ヶ月通院の慰謝料は67万円ということになります。 自己流の交渉で保険会社が弁護士基準とおりに支払ってくれることは稀です。67万円の8割だと53万6000円ですので、この辺を目標金額にするといいでしょう。

実際にどうやって交渉するとよいでしょうか。口頭で交渉してもよいのですが、言った言わないというトラブルを避けるため、 請求内容を文書にまとめて郵送したほうがよいでしょう。

まず、最初にいくら請求するかを決めます。モメても構わないなら高めの金額、例えば70万円などにします。なるべく円満に解決したければ低めの金額、 例えば60万円にします。なぜその金額にしたのか、自分が事故でどれだけ大変だったのかについても文書に書いておきましょう。 損害賠償請求に関する論文や裁判例を資料として添付できれば理想的ですが、一般の方にはそれは難しい事です。 そのため請求書の内容は、どれだけ事故で大変だったかを主張することがメインになると思いますが、金額が大きくなければこれで上手く行くことも多いと思います。 文書が出来上がったら担当者宛に郵送し、返事を待ちます。

保険会社の回答に満足できない場合は、再度文書を作って送ります。内容としては保険会社の言い分が妥当ではないことの根拠説明や、金額の再提示などが考えられます。 満足できる回答を得られたら、免責証書(示談書)を郵送するように伝えます。

専門家を選ぶ

慰謝料の交渉など、損害賠償請求に関することは弁護士に相談してください。自分の過失が大きいとか、加害者が任意保険に未加入、後遺症があるなどの理由で、自賠責保険を請求したい場合は、当行政書士事務所にご相談ください。

損害額が大きくても、自分で解決できるケースは多い

尚、重大事故(死亡事故や重い後遺症)ほど損害賠償額が大きいものですが、解決の難易度とは必ずしも比例しません。 12級の後遺障害事案よりも、死亡事案の方が事故処理としては簡単である場合も多いのです。 依頼先を選ぶ時はそういった点にも着目されたほうがよいでしょう。

重大事故でも資料は少ない事がある

上手な慰謝料請求の7つのポイント

1.基準の役割を知る

慰謝料の計算基準は大きく分けると三つあります。自賠責、任意保険、弁護士基準の三つです。自賠責、任意保険基準は、各保険会社が 損害賠償金を簡単な手続きでスムーズに支払うために定めた基準です。弁護士基準は損害賠償請求をするときに目安にされます。 損害賠償請求をするときは弁護士基準で計算しましょう。

2.請求額を決める

弁護士基準で計算した金額をストレートに請求しても、なかなか認められるものではありません。 慰謝料表から導いた金額を参考に、個別の事情により増減させて請求額を決めます。早く解決したければ例えば1~2割減額して、 特に大変な事情があった場合は、1~2割増額して請求するなど工夫してみましょう。 慰謝料の金額というのは答えは一つではありません。例えば14級の後遺障害慰謝料は110万円という基準がありますが、 判例でも個別事情により認定額が90万円とか130万円という場合があります。 基準とは異なる金額を主張しても、それが間違いということではないのです。

3.素人が弁護士基準を使ってもいいのか

もちろん構いません。弁護士に頼まないから弁護士基準で計算しても無駄ということはありません。 保険会社担当者は、しばしば「赤い本は裁判をしたときの基準ですから無理です」とか「弁護士に頼んだときの基準ですから」などという言い方をしてきますが、それは単なる逃げ口上に過ぎないのです。 ただし根拠をしっかり示さないと、どんなに正確に計算してあっても相手にされない可能性が高いです。 基準というのは損害賠償額を計算する目安に過ぎません。実務では赤い本などの基準のほか、事案ごとの事実関係や 裁判例、学説などを参考にして損害賠償額を算定します。単に「基準だから」という考え方ではなく「こういう事実や裁判例に照らすと基準を参考にして これくらいの金額が妥当」という考え方をすべきです。

4.請求のポイント

保険会社の人は事故の被害者を何人も担当しています。10人いれば一番気の毒な人から、たいして気の毒ではない人まで、 順番に並べることができるでしょう。もしもあなたがたいして気の毒でない人の方に見られている場合は、 客観的にどれだけ大変だったかをわかってもらわなければなりません。そうでなければ担当者も簡単には譲歩してくれないはずです。 感情的な苦情を並べても、効果は期待できませんので、客観性を重視しましょう。

それから次にどうするかを考えておきましょう。低めの金額で交渉すれば要求を受けてもらえることもありますが、高めの金額にした場合は、簡単には 譲歩してもらえません。「これは弁護士基準ですから、弁護士を入れてもらえないと無理です」といわれた時にどうするかを考えておくのです。 低い損害額では、弁護士に頼めないことは保険会社の人にもわかっています。こちらの手の内を読んでそう答えてきているのです。

「無理です」といわれたら、次は事情を説明し同じ金額を請求するか、若干金額を下げて再提示する方法があります。 頭にきて請求額を釣り上げるようなことはしない方がいいでしょう。それでは話し合いになりませんね。 保険会社の人も、なるべく早く解決したいという気持ちがありますので、そこを上手くつくと話し合いは前進しやすいのではないでしょうか。

5.上手な交渉のやり方

電話や対面で交渉するのは難しいものです。 話し合いの経緯や要点もあやふやになりがちですので、よほど単純な内容でない限りは、文書のやり取りで交渉を進めるのが安心です。 文書は手書きでも構いません。捺印はしてもしなくてもいいでしょう。

将来の不安や、加害者に対する恨みつらみを述べることは極力避け、請求内容を裏付ける正しい根拠の説明に時間を費やしましょう。 相手の言い分を聞き、立場を理解し、必要に応じて譲歩することも考えましょう。

交渉に大切なのは何といっても損害賠償請求全般に関する正しい知識です。具体的には「後遺障害の認定」「慰謝料の計算」「損害の立証」などの知識が 挙げられます。被害者側が努力をして正しい方法で請求を行えば、ほとんどの保険会社は任意保険基準以上の慰謝料であっても訴訟に至ることなく支払いに応じます。 上手な交渉をするためには「適正な損害額を知り」、「正しい根拠を示す」ことが大切です。 しかし学説や論文、裁判例等の収集も必要なため、専門書等を持たない一般の方には容易な作業ではありません。

保険会社は被害者の主張内容が的を得ていることがわかれば、無理な主張をしなくなります。大きい声や高圧的な態度など必要ありません。 正しい根拠を示した文書だけでも、理想的な解決は可能なのです。

文例

御社から提示された金額は、私の考えで計算した金額とは大きな違いがあります。この額では示談できませんので、もう一度可能な金額を 提示してください。
御社の提示金額は低額であり、受け入れることはできません。資料のとおり弁護士基準では100万円となりますので、 少なくとも90万円はお支払いいただきたいと思います。それ以下の金額で示談をする考えはありませんので、ご検討の上、お返事ください。

6.成りゆきまかせは失敗のもと

全てを保険会社まかせ、医師まかせにしてはいけません。被害者として必要な知識は積極的に得ておかないと失敗します。 インターネットの情報も参考になりますが、一般論であることがほとんどです。「書いてあることが皆違う」といって混乱する人や、 勘違いして失敗する人も多いです。損保担当者は自分の立場で物事を主張してきます。これに余裕で反論できるほどの知識を持つ人が成功します。

7.失敗談を知っておく

上手くいった話よりも、失敗談に教訓があるものです。

「会社は休まずにすんだのですが、主婦分の休業損害が請求できるとは知りませんでした。」(有職主婦)

「慰謝料を上限でお支払いしますから、先に傷害分だけ示談してくださいといわれて応じてしまいました。 本当はもっと請求できたのですね。」(14級認定の会社員)

「保険会社の人に5カ月で治療費は払えないといわれ、通院を止めてしまいました。 後遺症にも認定されませんでした。」(異議申し立てにより14級になった主婦)

「慰謝料を提示された時に、法律で決まっている自賠責保険の計算式ですと説明され、随分少ないけど仕方ないのかと、 損保担当者のことを信じてしまいました。示談前に間違いに気がついてよかったです。」(主婦)

交通事故紛争処理センターや裁判所の利用

交通事故紛争処理センター

損害保険会社の出資で運営されている公益財団法人です。主に交通事故の被害者と、加害者側の任意保険会社の間に生じた紛争について、 話し合いによる解決を援助してくれます。交通事故紛争処理センターの特徴について、利用者の声を参考にまとめてみました。

  • ・利用申し込みの手続きが簡単で、訴訟が難しい場合には便利。
  • ・立証資料も裁判所のような厳密さは認められないので利用しやすい一方で、しっかりした資料を用意していかないと主張が通らないことも。
  • ・あくまで中立の立場で、被害者の味方ではないため、大幅な譲歩を求められることも。
  • ・無料対応のせいか、担当する人によっては真剣に話を聞いてくれないことも。

裁判所

調停や簡易裁判所であれば被害者自身での利用も可能ですが、管轄や請求内容、解決可能性などについて、 弁護士に相談してから利用することをお勧めします。

  • ・訴状などの書面の用意が、専門家でなければ難しく利用しにくい
  • ・和解と異なり判断がシビアなため、負けた場合の打撃が大きい。
  • ・後遺障害の認定なども裁判所で判断してもらえる場合がある。