逆相続とは
高齢の親が亡くなり、子が財産を相続するのが一般的な相続の形です。逆相続というのは、親が健在であるのに、子が死亡し、子の財産を親が相続する場合をいいます。
なにが問題なのか
死亡事故の損害費目には、死亡逸失利益というものがあります。逸失利益とは、死亡により失った、将来得られるはずだった利益のことをいいます。 例えば20歳の人が67歳まで働けると仮定した場合、基礎収入の47年分から、その人の生活費を控除(衣食住等を必要経費とみて差し引く)した金額が逸失利益となります。
親の財産を子が相続するのは一般的なことですので、たとえそれが交通事故によって早まったとしても、損害の計算上は特に問題はありません。ところが逆相続の場合は、 本来は子より先に死亡することが一般である親が財産を相続することとなるため、矛盾が生まれてきます。
例えば被害者が結婚して子をもうけた場合、その時点で親は相続権を失います。そうでない場合でも、被害者の寿命が尽きる以前に、親の寿命が尽きるのが普通ですので、 逆相続の場合に通常の計算をした逸失利益を親に相続させることは、本来は自分が先に死亡して取得できないはずだった逸失利益まで親に与えるという不合理が生じるのです。
逆相続の場合は特別な計算方法をとるべきなのか
親の平均余命以降に発生する逸失利益については認めないとか、漸減させるなどの計算方法をとることも可能でしょうが、実際にはそのような計算方法が取られることはないようです。 基礎収入額や生活費控除率、就労可能年数を決めるにあたって、控えめな算定方法が採用されやすいということはあるでしょうが、それが基準化されているということもありません。
事故の結果、逆相続ということになったとしても、それを理由に逸失利益を控え目に計算するということは、加害者の賠償負担額を軽減することにもつながるため、 そのような取り扱いが定着しないのは当然のことともいえるでしょう。