消滅時効と援用
権利を行使できる者が、その権利を行使できるときから一定の期間に権利を行使しない場合に、その権利を失う事があります。 例えば一般の民事上の債権は、債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間、あるいは権利を行使することができる時から10年で時効となり、権利が消滅します(改正民法2020年4月1日施行)。 ただし、時効の利益を受けるものは、時効の援用(時効の利益を受けますという主張)をする必要があります。時効が援用されなければ、権利は消滅します。
時効の更新と完成猶予
消滅時効にかかりそうな時、被害者としては権利が時効にかからないように時効を更新・完成猶予させることができます。 時効の進行をとめるには、次のような方法があります。
- 1 裁判上の請求
- 2 支払督促
- 3 和解・調停
- 4 破産手続・再生手続・更生手続参加
- 5 強制執行・担保権の実行・競売
- 6 仮差押え、仮処分
- 7 催告
- 8 承認
- 9 協議を行う旨の合意
時効が更新しますと、その時点から初めから時効が進行を始めます。 ただし催告などは完成猶予となるだけで、一時的に6ヶ月間停止するだけですので、 その間に訴訟手続きをとるなどの対策が必要です。
交通事故の時効の起算点
自賠責保険の被害者請求権は事故から3年(平成22年4月1日より前に発生の事故は2年)で時効になります。加害者請求は、加害者が被害者に賠償金を支払ったときから3年(平成22年4月1日より前に発生の事故は2年)で時効になります。
不法行為による損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年で時効となります。
ただし、人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権は起算点から5年(2020年3月31日以前は3年)で時効になります。
つまり物損は3年、人身損害は5年ということになります。
※経過措置として附則が定められています。
民法第724条では、時効の起算点を損害及び加害者を知ったときからと定めています。通常は、傷害については事故の時、 後遺障害については症状固定の時、死亡の損害は死亡の時を、それぞれ起算点と考えます。 なお、2020年4月1日以降の事故より、損害および加害者を知り得なくとも、事故の時から20年で消滅時効にかかることとなりました。
任意保険会社が治療費を払ってくれた場合は、一般的にはそれが債務の承認と認められます。従って、事故から保険会社が 治療費を支払い続けてくれている間は、時効は中断し続けていると考えて良いでしょう。
いつ時効になりますか?
追突事故でむち打ち症になり、保険会社の支払いで1年半ほど治療を受けてきました。 後遺症の手続きが進まなくて、もうすぐ事故から3年たつのですが、時効になってしまいますか?時効になると保険金は支払われないのでしょうか?
お話からしますと、任意保険から治療費を払ってもらっていらっしゃったということですので、治療費支払により時効は中断しています。 その場合、事故日から3年経過したからといって、時効にはなりません。一般的には任意保険会社からの治療費の支払いが 終わったときから時効を起算することになります。