最高裁の交通事故に関する判例  (出典 自動車保険ジャーナル 交通事故民事裁判例集)

交通事故オンライン損害賠償編

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最高裁判例 昭和以前のもの

  • 最高裁昭和30年2月3日判決 故障により自力走行の不可能になった貨物自動車を牽引していた運転手に過失が認められた。
  • 最高裁昭和32年4月30日判決 民法715条により損害賠償義務を負担するものは、被害者に対する損害賠償債権により相殺を主張することはできない。
  • 最高裁昭和37年12月14日判決 自賠法3条の他人には、当該自動車の運転者は含まない。
  • 最高裁昭和39年2月11日判決 農業協同組合の運転手が私用が禁止されていた組合所有の自動車を無断運転で帰宅途中に起こした事故につき、組合に運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和39年5月12日判決 被害者が自動車保有者と保険会社に損害賠償請求権を持つ場合に、保険会社への請求権の放棄は保有者への請求権の行使に消長をきたさないとされた。
  • 最高裁昭和39年9月25日判決 生命保険金は既に支払われている保険料の対価であるので、損益相殺の対象とはならない。
  • 最高裁昭和39年12月4日判決 ドライブクラブから自動車を借り受けたものがこれを運転仕様しているときはドライブクラブは運行供用者にあたらないとした。
  • 最高裁昭和40年9月7日判決 無断運転であっても、自動車所有者との間に雇用関係があり、日常の自動車の運転、管理状況から自動車所有者のためにする運行と認められるときは、所有者は運行供用者というべきである。
  • 最高裁昭和41年6月7日判決 労働者災害補償保険法20条の第三者とは、直接の加害者だけではなく、運行供用者も含める。
  • 最高裁昭和42年6月27日判決 被害者側の過失を考える場合における被害者側とは「被害者と身分上ないし生活関係上、一体をなすとみられるような者」をいい、保育園の保母は被害者たる幼児と一体とみなされるような関係とはいえない。
  • 最高裁昭和42年9月29日判決 運転者が酒によって助手席に乗り込んできた者に対して、結局は同乗を拒むことなく運転をした場合は、そのものは自賠法3条の他人にあたる。
  • 最高裁昭和42年11月1日判決 慰謝料請求権は相続の対象となる。
  • 最高裁昭和42年11月30日判決 自転車などにより牛乳配達をする従業員が、代表取締役の指導の下、同会社の自動車を使用して運転の練習をしていた場合に、従業員が同会社の車を無断で運転した場合に会社に運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和43年3月15日判決 全損害を正確に把握し難い状況のもとで、早急に少額の賠償金で示談がなされた場合には、当時予想し得なかった後遺障害による損害は示談契約は拘束力を及ぼさない
  • 最高裁昭和43年9月24日判決 追い越し態勢にある車は、並進車が突然自車の進路に近づいてくることまでも予想して事故発生を防止する義務はないとした。
  • 最高裁昭和43年10月8日判決 エンジン故障の為に他車に牽引されていた自動車後部荷台から飛び降りて死亡した場合、自動車の運行と死亡の間に因果関係を認めた。
  • 最高裁昭和43年10月18日判決 担保として預かった車を無断運転した従業員が起こした事故について、車の預かり主に保有者としての責任を認めた。
  • 最高裁昭和44年1月31日判決 名義貸しの場合につき、従属的関係がある名義貸与者に運行供用者責任を負わせた
  • 最高裁昭和44年2月28日判決 墓碑、仏壇購入のため費用を支出した場合には、不法行為によっ通常生ずべき損害として、その賠償を加害者に対して請求することかできる。
  • 最高裁昭和44年3月28日判決 地理のわからぬ助手に指図をしながら運転をさせ、助手席に同乗していた正規の運転者が、自動車損害賠償責任法3条の「他人」および民法第715条の第三者に当たらないとした。
  • 最高裁昭和44年9月12日判決 修理業者の被用者が、修理のために預かった車を無断で運転中に事故を起した場合に修理業者の運行供用者責任が認められた。
  • 最高裁昭和44年12月23日判決 病弱で勤労意欲に乏しく、事故当時の収入が生活費にも満たない49歳男子の死亡事案で、逸失利益が否定された。
  • 最高裁昭和45年1月22日判決 5歳男子の飛び出しによる死亡事故で、飛び出しは突然で、予期できぬ状況であったとされ、運転手に自賠法3条但書の免責を認めた。
  • 最高裁昭和45年1月27日判決 信号機のない交差点における優先道路は、交差している道路で明らかに幅員の広い道路の方が優先権があり、前方の左折車を追い越し交差点を通過しようとする自動車には徐行義務はない。
  • 最高裁昭和45年2月26日判決 弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り賠償を求めうる。
  • 最高裁昭和45年2月27日判決 B会社の社名を記載したA会社所有車が事故を起した場合に、B会社は単に運送契約上の注文主にすぎないとして、A会社に対する運行供用者責任が否定された
  • 最高裁昭和45年4月21日判決 死亡した被害者の慰謝料請求権は、特別の事情がない限り被害者の相続人に相続される
  • 最高裁昭和45年5月22日判決 酒に酔って道路を横断し自動車に轢過された歩行者の事案で、横断し終えてから、再度2、3歩後退したため事故に遭った被害歩行者に責任があるとされ、自賠法3条但し書免責を認めた。
  • 最高裁昭和45年6月19日判決 弁護士費用の損害賠償請求権は、依頼人が弁護士に本訴提起を委任し、報酬金の支払を約した時から3年の時効期間が経過したなら、時効により消滅したものであるとされた。
  • 最高裁昭和45年7月16日判決 兄の所有する加害車で妹が起こした本件事故につき、家族が共同して営業するガソリンスタンド業に加害車を使用していたこと等から直接の加害者、兄である所有者とともに一家の責任者である父親にも運行供用者責任が認められた。
  • 最高裁昭和45年7月24日判決 逸失利益の損害額を算定するにあたって、所得税その他の租税額を控除すべきではないとされた。消滅時効中断の効力は、一部請求であることが明示されていない場合、一部を請求する訴えの提起で損害賠償請求権全部につき時効中断の効力を生ずるとされた。
  • 最高裁昭和45年8月20日判決 国道における落石事故につき、従来しばしば落石、崩土があつたにもかかわらず、防護柵または防護覆を設置する等の措置のない場合には、その道路の管理に瑕疵があるというべきである
  • 最高裁昭和46年1月26日判決 退職直後の従業員に対し、寮を明け渡させるために日頃業務に従事していた自動車を無償で貸与し、事故を起こした事案で、会社に運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和46年1月26日判決 所有権留保特約をつけて代金を月賦払いとして自動車販売会社が自動車を売り渡した場合は、特段の事情のない限り自動車販売会社は運行供用者とはならない。
  • 最高裁昭和46年1月26日判決 近所に居住する所有者の姻族が、所有者の家の者に自動車を借りる旨は告げたが、所有者本人の承諾を得ず自動車を持ち出し、所有者の息子を同乗させて私用で妻の実家に行く途中起こした事案で、所有者に運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和46年2月9日判決 自動車の有料貸渡を業とするドライブクラブから借りた者が起こした事故でドライブクラブに運行供用者責任が認められた。
  • 最高裁昭和46年3月18日判決 夫が経営していたキャバレーが倒産して債務を負っていたため、妻が自動車の所有名義人になっており、夫が右自動車を使用中起こした事故につき、妻に運行供用者責任が認められた。
  • 最高裁昭和46年4月6日判決 ダンプカー持ち込みで雇われ、砂利採取場構内で砂利運搬の作業に従事していた者が構外で起こした事故につき、雇主に運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和46年6月29日判決 付添看護を必要とする傷害を受け近親者の付添看護を受けた被害者は、加害者に対して、近親者の付添看護料相当額の損害を蒙ったものとしてその賠償請求をすることが出来るとされた。
  • 最高裁昭和46年7月1日判決 信用組合の従業員が、組合の常務理事所有の自動車を修理業者から引渡しを受け、祭見物に行った帰りに起こした事故につき、常務理事に運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和46年9月16日判決 昼休み中に会社の原付自転車を勝手に運転し事故を起こした事案で、原付自転車所有の会社に使用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和46年9月30日判決 会社が社員の起こした事故で使用者責任を負うとき、社員の加害行為についての責任と使用者の責任との関係は、いわゆる不真正連帯債務と解すべきであるとした。
  • 最高裁昭和46年11月16日判決 自動車販売会社が顧客に中古車を販売したが、登録手続等の期間中、他の下取車を10日ぐらい代車として貸与している間に顧客の被用者の起こした本件事故につき、右販売会社に運行供用者責任が認められた。
  • 最高裁昭和46年11月19日判決 警察車両が自動車専用道路で転回をしたために発生した追突事故で、自賠法三条の免責が否定された。
  • 最高裁昭和46年12月7日判決 建設会社の下請会社の社員が起こした事故で、元請会社の自社マークをつけて運行していた加害車には支配を及ぼすものではないとされ、元請会社に運行供用者責任を認めなかった。
  • 最高裁昭和46年12月7日判決 下請業者の起こした事故に対し、元請業者は、発注業者が直接的支配を持って指揮監督し元請会社への支配は間接的であったことなどを主張したが、運行供用者責任が認められた。
  • 最高裁昭和46年12月21日判決 運送会社社員が、業務終了後に私用で会社所有の原付自転車を勝手に運転して事故を起こした事案で、加害者は、従来より会社社長から急用の際の本件車の使用許諾を得て、頻繁に運転していたことから、勤務会社の使用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和47年5月30日判決 車両の運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係があるとされる場合は、車両が被害者に直接接触したり、または車両が衝突した物体等がさらに被害者に接触したりするときが普通であるが、これに限られるものではなく、このような接触がないときであっても、車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであって、歩行者がこれによって危険を避けるべき方法を見失い転倒して受傷するなど衝突にも比すべき事態によって傷害が生じた場合には、その運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係を認めるのが相当である。
  • 最高裁昭和47年5月30日判決 夫婦の一方が不法行為によって他方配偶者に損害を与えたときは原則として損害賠償責任が発生するとされ、妻の自賠法16条に基づく損害賠償額の支払請求が認められた。
  • 最高裁昭和47年10月5日判決 車体架装会社から自動車販売会社へ陸送中に起きた事故につき、自動車販売会社に運行供用者責任を認めなかった。
  • 最高裁昭和48年1月30日判決 友人同士の自動車の貸し借りにおいて、その運行支配は失われていないとして、貸主の運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和48年2月16日判決 国道と複雑に交わる路面電車運行時に、信号機の設置のない交差点を歩行中の被害者と電車が衝突した事案で、信号機の設置位置が不適当なものであると、その設置に瑕疵があると認めた。
  • 最高裁昭和48年4月5日判決 損害賠償請求の定義として、治療費や逸失利益など身体的な傷害を伴なう財産上の損害と慰謝料など精神的損害とは、同一事故において、その賠償の請求権は本来一個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は一個であると定めた。
  • 最高裁昭和48年4月20日判決 原動機付自転車の無謀な右折のために進路をふさがれた自動車が暴走して自転車と衝突した事故につき、原動機付自転車の無謀運転と自転車との事故に相当因果関係を認めた。
  • 最高裁昭和48年7月6日判決 工事現場で作業中、大型ショベルローダに轢かれ死亡した事案で、運転免許が不要で自動車登録もない本件加害車は、自賠法5条の適用は受けないが、道路以外の場所でも運行の用に供するものと判断でき、自賠法3条の適用を認めた。
  • 最高裁昭和48年11月16日判決 労働能力喪失率表に基づく労働喪失はあくまで目安であり、同表喪失率以上に収入減少が生じる時は、その実情に応じて請求できるとした。
  • 最高裁昭和48年12月20日判決 タクシーを盗んで営業活動していた者が運転中に事故を起こした事案で、タクシー会社に運行供用者責任と民法715条の不法行為責任のいずれも認めなかった。
  • 最高裁昭和49年4月5日判決 弁護士費用の算定については、事案の難易、請求認容額等の諸般の事情を考慮して事故と相当因果関係のある損害と認めたものであり、既に過失相殺をして減額した請求認容額を考慮して定められたものであるから、その金額からさらに過失相殺による差引をすべきではないとした。
  • 最高裁昭和49年4月15日判決 被害車両を売却した際に、事故当時の価格と売却代金の差額を損害賠償請求できるのは、車両が物理的または経済的に修理不能となったときの他、買い替えが社会通念上相当と認められるときも含むとした。
  • 最高裁昭和49年4月25日判決 海外留学のためヨーロッパに滞在していた者の近親者が交通事故に遭い、その看護等のために一時帰国を余儀なくされた事案で、右近親者の一時帰国に要した渡航費用が損害賠償に含まれるとされた。
  • 最高裁昭和49年6月28日判決 双方の過失に起因する同一の交通事故によって生じた物的損害に基づく損害賠償相互間においても、民法509条の規定により相殺は許されないとされた。
  • 最高裁昭和49年7月16日判決 原付自転車購入時は、卒業を直前に控えた専門学校生だったことから、右原付自転車を買い与えた父親に運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和49年7月19日判決 家事従事者の労働を、金銭的に評価して損害と認めた。
  • 最高裁昭和49年10月22日判決 仮免許中で自動車修理工場に従事する整備工見習が、休日に工場敷地内にキーをつけたまま放置されていた右工場の専属的下請人の自動車を無断で持ち出し、運転練習中に事故を起こした事案で、自動車修理工場の使用者責任を認めなかった。
  • 最高裁昭和49年11月12日判決 前日まで社員であった者が、会社の駐車場にあるキーを差し込んだままで施錠もない会社保有の自動車を無断で乗り回して起こした事故につき、保有会社に運行供用者責任を認めた事例。
  • 最高裁昭和49年11月29日判決 交通事故による損害賠償請求債権も金銭債権にほかならないから、債権者がその債権を保全するため民法第423条1項本文により債務者の有する自動車対人賠償責任保険の保険金請求権を行使するには、債務者の資力が債権を弁済するについて十分でないときであることを要すると解すべきであるとされた。
  • 最高裁昭和49年12月6日判決 会社所有の自動車を私用で使い、同乗者全員が死亡した事故で、普段自動車を私用で使うことは会社で禁止されていて、運転者も一旦は躊躇するも同乗友人にそそのかされ運行の用に供した事実があり、右自動車所有の会社に運行供用者責任を認めなかった事例。
  • 最高裁昭和49年12月17日判決 不法行為による生命侵害があった場合、被害者との間に民法711条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求しうるとした。
  • 最高裁昭和50年5月29日判決 レンタカー業者は一定の成約のもと、その賃借人の運行に対して運行支配及び運行利益を有するものとして、レンタカー会社の運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁昭和50年6月26日判決 夜間、工事中を示す標識板やバリケードなどが他の通行車によって倒され、そのまま進行し工事穴に自動車を陥没させ死亡した事案につき、表示板を倒されて直ぐの事故であり、原状に復することは不可能であったとして、市の道路管理に瑕疵を認めなかった。
  • 最高裁昭和50年7月14日判決 無保険車両が起こした事故で保障金を支払った国がその限度で加害者に求償していた事案につき、被害者等の提出した請求書中に請求金額及び算出基礎の記載がなくとも拘束されないとされた。
  • 最高裁昭和50年7月25日判決 87時間駐車したままになっていたため、本件放置車に被害原付自転車を追突させた事故で、道路の安全管理に瑕疵があったものと、県に道路管理違反の過失を認めた。
  • 最高裁昭和50年9月11日判決 下請運送会社の車の起こした事故であっても、元請運送会社の運行表のスケジュールに従い、積荷の積み降しも確認を受けるなど指揮監督に服して運送業務に従事していたことから、元請会社の運行供用者責任が認められた。
  • 最高裁昭和50年10月3日判決 脳挫傷などの受傷により、事故後1年を経て自殺した事案につき、本件事故と被害者の自殺には相当因果関係がないものと認めた。
  • 最高裁昭和50年10月9日判決 自転車と自動車との信号機のない交差点での衝突事故で、先入車両の原理に基づき自転車と自動車の過失割合を4対6と判断するのは、自動車の過失割合が著しく低く違法であると判断された。
  • 最高裁昭和50年10月24日判決 死亡した者の遺族が遺族補償金を受ける時、損害賠償債権額の算定において、遺族補償金相当額を相殺し、その給付額を控除しなければならないと示した。
  • 最高裁昭和50年10月24日判決 医師が化膿性髄膜炎の治療としてしたルンバールとその後の発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定したのが経験則に反するとされた。
  • 最高裁昭和50年11月4日判決 従業員の運転する会社所有の自動車に同乗中、ガードレールに衝突し傷害を負った同族会社の取締役は自賠法3条の他人には該当しないと会社の損害賠償請求を認めなかった。
  • 最高裁昭和50年11月14日判決 保険会社が事故調査の段階で、契約者の酒酔い運転の事実に気付かない事を理由に錯誤の無効を主張する事案で、相手側は所轄警察署の照会のみで判断した保険会社の誤信は過失であるが、重過失に該当するのもとは言い切れないと判断した。
  • 最高裁昭和50年11月28日判決 満20才になる息子が起こした事故につき、父親が所有名義人となり、加害車両は父親宅に保管され、息子が父親と共に農業に従事していることもあり、父親は社会通念上加害車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあったとされて、父親に運行供用者責任が認められた。
  • 最高裁昭和51年2月18日判決 信号機のある交差点を直進する車両の運転者は、信号を無視して交差点に進入してくる車両を想定してまで交差点手前で注意義務を負うものでないとした。
  • 最高裁昭和51年3月18日判決 6か月内の治癒見込みのもとの「異議の申立、訴訟等は一切しない」とする示談契約は、6か月内で治癒したときは異議申立、訴提起はしない旨の合意にすぎず、長期治療の本件では「不起訴の合意が成立したことを意味するものではない」とされた。
  • 最高裁昭和51年3月25日判決 夫が運転中、点滅信号のある交差点を進行中に対向車と衝突し、同乗中の妻が損害を被った場合、右衝実において夫にも前方不注意の過失がある場合、その損害を被害者側の過失として斟酌すべきであるとされた。
  • 最高裁昭和51年3月30日判決 交差点内における自動車同士の衝突事故で、その反動で傷害をうけた被害歩行者が運転者A・Bを相手に損害賠償請求し、Aは請求を認容され、Bは請求棄却された。原判決をうけて、Bと被害者間での控訴審において、Aが控訴しない場合には、Aが被害者の補助参加人として本訴訟に参加することが認められた。
  • 最高裁昭和51年6月24日判決 積雪の凍結のため自動車がスリップし、歩行者を死亡させた事故につき、歩道の設置のないこと及び凍結を道路の設置又は管理の瑕疵とすることはできないとして、京都府に国家賠償法の責任を認めなかった。
  • 最高裁昭和51年6月24日判決 販売員が事故で営業できなくなり、その会社に損害が生じたとしても、加害者においては、一般に通常予見可能な損害の範囲とはいえないとし、企業損害を認めなかった。
  • 最高裁昭和51年7月8日判決 被用者の不法行為により使用者責任を負い、かつ自らも物的損害を受けた使用者から当該被用者に対する求償および損害賠償請求につき、信義則上4分の1の範囲でのみ、その請求を認めるのが相当であるとされた。
  • 最高裁昭和51年10月8日判決 逸失利益の算定にあたり、所得税を控除すべきではないとされた。
  • 最高裁昭和52年4月8日判決 労働基準局長が加害者に宛てた代位求償の納入告知書により、被害者が給付を受けられなかったことを窺わせるに足りる特別な事情がない限り、給付を受領したと認められるとされた。
  • 最高裁昭和52年5月2日判決 A所有の普通乗用車をその弟Bが借り受けて友人C等と旅行に出かけ、BとCとが交代で運転をしていたが、Cが運転中に転落した事故につき、Bの運行利益、運行支配はAよりも直接的、顕在的、具体的であって、Aとの関係ではBは自動車損害賠償保障法3条でいう「他人」ではないとされ、保険会社が免責された。
  • 最高裁昭和52年5月27日判決 被害者が厚生年金保険と労働者災害補償保険の受給権者であった事案につき、第三者の損害賠償義務と政府の保険給付又は災害補償の義務とが相互補完の関係にあり、同一事由による損害の二重填補を認めるものではないとされた。
  • 最高裁昭和52年6月28日判決 夜間、乗客降車中のバスと行違う際、バスの後続車のライトで前方確認が困難であったのに減速もせず進行した加害車が、バスから下車し、その後方直近から小走りで斜めに横断を始めた被害者(男・46歳会社勤務)と衝突した事故につき、被害者に30%の過失相殺を適用した。
  • 最高裁昭和52年6月28日判決 前方を行く車を追い越そうと対向車線にはみ出して走行したところ、対向車と衝突した事案で、対向被害車にも速度オーバーの過失があるものとされ、被害車運転手に2割の過失相殺を適用した。
  • 最高裁昭和52年9月22日判決 建設会社の従業員が出張命令を受けて、自己所有の車で出張に行き、その帰路で起こした衝突事故について、会社は従業員のマイカー使用は禁じており、これを従業員も熟知していたことなど、客観的にみて、本件行為は会社の業務の執行に当たるということはできないと判断し、会社の運行供用者責任を否定した。
  • 最高裁昭和52年9月22日判決 運転免許のない会社の従業員が、会社所有の自動車を夜間勝手に持ち出し、クラブで飲酒後、ホステスを同乗させ、安全地帯に衝突させた事故で、自動車所有会社に所有者責任を認めたが、同乗のホステスとの関係は、他人であるとされた。
  • 最高裁昭和52年9月22日判決 兄Aが自己所有の自動車のキーを弟Bに預け、Bがそれを友人Cに貸し、Cが運転中事故を起こして、同乗していたBが死亡した場合、BはCの共同運行供用者の立場であり、またBはAに対して自動車損害賠償保障法3条にいう「他人」であることを主張できないとされ、原判決を正当とした。
  • 最高裁昭和52年10月20日判決 訴訟追行のためにかかる弁護士費用は、事実の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を考慮して相当と認められる額が、右不法行為と相当因果関係に立つ損害となるのであるから、その算定された額に対して更に過失相殺の規定を適用するのは相当でないとした。
  • 最高裁昭和52年11月24日判決 自動車損害賠償保障法2条2項にいう「自動車を当該装置の用い方に従い用いること」には、自動車をエンジンその他の走行装置により位置の移動を伴う走行状態におく場合だけでなく、特殊自動車であるクレーン車を走行停止の状態におき、操縦者において、固有の装置であるクレーンをその目的に従って操作する場合をも含むものと解するのが相当であるとされた。
  • 最高裁昭和53年8月29日判決 幅員7・3㍍の道路左側に4台のダンプカーが停車していたため、道路右側部分を進行中の加害Y車(バス)と対向進行してきた被害X車(ライトバン)が正面衝突し、X車運転者が死亡した事案につき、Y車の過失が認められると共に時速50ないし60㌔㍍で走行してきたX車に5割の過失相殺が適用された原審の判断は正当とされた。
  • 最高裁昭和53年8月29日判決 Aが父親(被告)から借用中の自動車を友人B、C、Dが更にAより借り受けてドライブのためBが運転中、折からの雨天をついて時速約100キロメートルを超える速度で暴走したため、カーブを曲りきれずガードロープの支柱に激突、C及びE(原告の子女)が死亡した事故について、被告は、右事故当時におけるBらの自動車の運行について、運行供用者の地位を失わず、また、Eは、Bらの誘いによりドライブ中の車に同乗したものであったことなどから、右Bらとの共同運行供用者には当たらないとして、原告の賠償請求を是認した原審判断を正当とした。
  • 最高裁昭和53年9月29日判決 降雨時横浜新道保土ケ谷陸構上てスリップし、対向車線上で衝突した本件事故につき、加害者側は路面の摩擦係数が安全に必要な限界値に満たなかったことによる不可抗力のスリップであるとの主張を退け、加害車の前輪が摩耗しており、高速進行中に急制動をかけ、かつハンドル操作等も不適切であったことが事故原因であるとする原審判断が支持された。
  • 最高裁昭和53年10月20日判決 10才幼女の死亡逸失利益算定につき、中聞利息控除は、ホフマン方式、ライプニッツ方式いずれも正当であるとされた。稼働可能年令に達するまでの養育費は控除すべきではないとされた。
  • 最高裁昭和54年3月2日判決 A市管理の道路を原付自転車で走行中の被害者が、3社施工の配水管布設工事によつて出来たくぼみに填り、転倒したところをC運転の自動二輪車が轢過死亡させた事故で、Cが被害者に支払つた損害賠償額はAとBの国家賠償法、民法709条、719条責任による損害であると主位的請求した事案につき、Aの管理瑕疵、Bの過失とCの損害発生とは相当因果関係がないとされた。
  • 最高裁昭和54年5月31日判決 自動車対人賠償責任保険契約における保険金支払債務の履行期の到来につき、保険金支払債務の履行期が到来しても、契約上填補すべき損害賠償額が確定されるまでは、保険契約者の保険金支払債務の履行期は到来しないものと解された。
  • 最高裁昭和54年6月26日判決 5歳女児の死亡逸失利益算定につき、賃金センサスによる男女間格差等は憲法14条違反との主張に対し、センサス女子初任給を基礎として算定しても不合理とはいえないとされた。
  • 最高裁昭和54年7月24日判決 バスが道右折を開始したところ、最高速度を超えて進行してきた対向の訴外A車がバスの右折に気づくのが遅れたため急いでハンドルを右に転把したため、バスの後ろを走行中の被害X運転の車と衝突した事故につき、バスの運転者は直進の対向車が法定最高速度を10ないし15㌔㍍程度超過して走行している可能性があることを予測に入れたうえ右折の際の安全を確認すべき注意義務があり、バスの運転者に過失がないとは言えないとされた。
  • 最高裁昭和54年9月7日判決 双方の過失に基づく同一事故の物的損害においても、民法509条によって相殺は許されないとされた。
  • 最高裁昭和54年12月4日判決 2台の車による共同不法行為事案で、一方の加害車両がひき逃げで不明であっても、他方の加害車両が判明していて、加入している自賠責保険から保険金が支払われる場合には、ひき逃げ車両による政府保障事業は受けられないとされた。
  • 最高裁昭和54年12月6日判決 38歳男子漁船員が軽四輪乗用車を運転中、右折乗用車に衝突され、腰椎椎間板損傷で9級後遺障害を残したとする事案で、事故で椎間板ヘルニアが発症した場合は直後から激痛を発症するが、被害者の発症は事故後3週間後であり、椎間板の老化による狭小化を基盤とし外力が誘因となって発生したと本件事故との因果関係が否認された。
  • 最高裁昭和55年3月13日判決 深夜の道路を歩行中、飲酒運転、スピード超過の加害車に衝突されて死亡した事案につき、歩車道の区分がなく、照明設備が十分でなかつたとしても道路管理者に国家賠償法による責任はないとされた。
  • 最高裁昭和55年6月10日判決 自分の車で遊興の帰途、同乗中の友人に一時運転を交替していた際の事故で死亡した事案につき、被害者である保有者の運行支配が直接的、顕在的、具体的であるとされ、自賠法3条の「他人」に当らないとされた。
  • 最高裁昭和55年6月16日判決 訴外人が被害者を同乗させ前車を追越そうと対向車線を走行中、車道外側と路肩にかけて存在した窪地に落輪、電柱に激突し被害者を死亡させたため、被害者の両親が道路管理者に国賠法による賠償請求していた事案につき、道路の管理瑕疵と被害者の死亡とは相当因果関係がないとされた。
  • 最高裁昭和55年9月11日判決 港湾施設建設中の埋立地に車を乗り入れ、誤って海中に転落し、運転者が死亡した事案で、埋立地とはいえ車の乗り入れ禁止、岸壁注意などの標識等を設置しておかなかった管理者に国賠法責任が認められた。
  • 最高裁昭和55年12月11日判決 ガードレールが設置されていなかったことを道路の管理瑕疵に当るとした原判決(80%の過失相殺適用)を理由不備として破棄した。
  • 最高裁昭和56年2月17日判決 BがA所有の自動車を運転し、Bの同僚Cが同乗中事故が起きCが受傷した事故につきBとCは身分上、生活関係上一体をなす関係にあるとは認められないとして、CからAに対する損害賠償請求にBの過失を斟酌して過失相殺することは許されないと判示した。
  • 最高裁昭和56年3月24日判決 自賠責保険金請求権に転付命令が申請された場合、転付命令が有効に発せられ、かつ弁済効果が生ずることにより停止条件が成就し、右保険金請求権を額面債権として取り扱い、その被転付適格を肯定すべきものである。
  • 最高裁昭和56年7月14日判決 車のディーラーとサブディーラーとの間で、車両売買につき所有権留保特約を付した場合、サブディーラーの代金不払いを理由として解除したうえ、留保所有権に基づく車両の返還請求権をユーザーに請求することは、権利の濫用として許されないものではないとされた。
  • 最高裁昭和56年10月8日判決 8歳女児の死亡逸失利益算定につき、賃金センサス・パートタイム労者を除く女子全労働者・産業計・学歴計の各年令階層別平均給与額を基準として収入額を算定しても不合理ではないとされた。
  • 最高裁昭和56年11月13日判決 材料置場に停車させた貨物自動車に積載された電柱の荷降し作業中、誤って電柱の一本が荷台から落下したため、作業員がその下敷となって死亡した事案につき、本件事故は自動車損害賠償保障法3条にいう自動車の運行によって発生したものということはできないとされた。
  • 最高裁昭和56年11月27日判決 運転歴の浅い弟が兄を迎えにいき、その帰路途中での事故で、兄が弟を指揮監督して、その自動車により自己を自宅に送り届けさせるという仕事に従事させていたといえるとして、兄と弟との間に民法715条1項にいう使用者・被用者の関係の成立を認めた。
  • 最高裁昭和56年12月22日判決 労災基準に基づく後遺症は存在するものの、被害者の従事する仕事の性質上、現在又は将釆における収入減が認められない場合は、特段の事由がない限り労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認めるものではないとされた。
  • 最高裁昭和57年1月19日判決 後輪が盛り土にはまり動けなくなったダンプカーを引っぱろうとしたブルドーザーが後退したためダンプカーの前部に衝突し被害者が両車の間に挟まれた形で死亡した事故につき、ダンプカーの運行によるものとした。自賠法16条による被害者請求は損害賠償請求権であって、保有者の保険金請求権の変形ないしそれに準ずる権利ではないから、保険会社の損害賠償債務は商行為により生じた債務には当たらず、商事法定利率6%による遅延損害金 の請求は認められないと認めた。
  • 最高裁昭和57年4月2日判決 シンナー遊びをしていて、道路上にある施錠なしの自動車を窃取し運転中に電柱に衝突させ、同乗者を死亡させた事故で、同乗者も窃取を共謀していたから、運行供用者の立場であり、「他人」であることが否定された。
  • 最高裁昭和57年4月27日判決 ダンプカーの荷台にブルドーザーを積み込もうとして操作を誤り、ブルドーザーを転落させて乗っていた被害者が死亡した事案につき、被害者は本件運行の運転補助者に該当するとされ、自賠法3条の「他人」には該当されないとされた。
  • 最高裁昭和57年7月15日判決 養老生命共済契約における災害給付金及び死亡割増特約金給付の免責事由である「重大な過失」の解釈につき、損害保険で言う「重大な過失」と同趣旨に解すべきであるとされた最判。
  • 最高裁昭和57年9月28日判決 同一訴訟内における被害者が加害者への損害賠償請求と保険会社への代位行使による保険金請求が可能なものとされた。
  • 最高裁昭和58年2月18日判決 2歳男児の死亡逸失利益算定につき、年少者の死亡の場合喪失期間が長期に亘るためその間の物価上昇及び賃金上昇を考慮すべきとの主張に対し、右上昇分を考慮しなかったとしても、不合理とはいえないとした。
  • 最高裁昭和58年2月18日判決 記名被保険者の弟子Aが承諾を得ないで車両を借受け、それを別の弟子Bに転貸し、Bが友人らとドライブ中自損事故を起した事案で、本件事故は自損事故免責条項にいう「正当な権利を有する者の承諾を得ない被保険自動車の運転」に該当するものと、保険会社免責とされた。
  • 最高裁昭和58年4月1日判決 体長40㎝のペット犬の鎖をはずし道路に飛び出した際、自転車で進行してきた7歳男子がこれを見て驚愕し、ハンドル操作を誤り端の川に転落し失明した事案につき、犬の飼主に安全義務違反での損害賠償責任を認めた。
  • 最高裁昭和58年4月5日判決 修理費が破損前の車両と同種同等の車両を取得するのに必要な客観的交換価格を著しく超える「全損」のときは、特段の事情のない限り、交換価格からスクラップ代金を控除した残額の賠償で足るとされた。
  • 最高裁昭和58年4月15日判決 死亡事故において、死者が被った損害に対する慰謝料の支払いは、被害者に相続人が存在するかどうかは直接的に関係がなく、慰謝料請求権は否定しえないものと解釈した。
  • 最高裁昭和58年4月19日判決 労災保険より受領した障害補償一時金及び休業補償金を慰藉料から控除することは許されないものとした。
  • 最高裁昭和58年5月27日判決 自衛隊車両を濡れた路面で運転中の上官が、補修工事で幅員が狭くなる中を急加速したため対向車と衝突し、同乗中の部下の自衛隊員が死亡したため、国家賠償請求を行なった事案につき、本件事故の発生は車両の運転者である上官が、道交法で当然に負うべき通常の注意義務を怠ったことで発生し、国には安全配慮義務違反はないものとした。
  • 最高裁昭和58年9月6日判決 弁護士費用の損害につき、事故後である訴状送達の翌日から遅延損害金の支払義務を負うものと判示した事例。
  • 最高裁昭和58年11月11日判決 AとBの小型貨物車同士が接触し、両車とも対向車線に進入して対向C乗用車と衝突した事案で、Aの無罪判決が確定した時をもって、民法724条の「加害者ヲ知リタル時」に当たるとされ、Bの消滅時効の抗弁を排斥した。
  • 最高裁昭和59年2月3日判決 乗用車同士の同士出会い頭の衝突事故について、優先道路を示す標識の有無と事故発生とには相当因果関係がないものと、県の営造物の設置・管理瑕疵を否定した。
  • 最高裁昭和59年2月27日判決 夜間、飲酒のうえ自動二輪車を運転中の被害者が赤色点滅灯を発見しながら工事バリケードに衝突し転倒受傷した事故につき、工事施工者に過失を認めず道路管理者としての市にも責任を認めなかった。
  • 最高裁昭和59年3月27日判決 早朝、霧雨で視界が悪くカーブしている道路左側中央寄りを減速せずに走行中の被害車(自衛隊用ジープ)助手席に同乗中の自衛官が、後方車に停止の合図をするため同車の右側に身を乗り出していたところを、通行区分を突破して走行してきた対向の自動車に当て逃げされ、死亡した事故につき、被害車運転者に過失を認めなかった。
  • 最高裁昭和59年11月22日判決 自賠法による「死亡による損害」と「死亡に至るまでの傷害による損害」は明確に区別するものであり、それぞれを合算して流用することはできないとした。
  • 最高裁昭和60年4月26日判決 何本かの道路が交わる変則的な交差点で、全赤状態が存在しない信号機の設置は、事故を発生させる危険性が高いため違法であると判断した。
  • 最高裁昭和60年4月30日判決 大型貨物自動車で狭路を進行する際、自車を避譲して走行している前方の自転車の追抜きは差し控えるべきであるものとした。
  • 最高裁昭和60年9月17日判決 保険金詐欺事件で保険会社が保険金支払義務を負わない場合には被害者の治療費も支払わないのは当然であるとされた。
  • 最高裁昭和61年2月27日判決 パトカーが速度違反車を追跡中、信号のある交差点にさしかかった際、青信号で進行した被害車と違反車が衝突した事案で、その行為をもって、パトカーが第三者への注意義務違反であるとはいえないと判断した。
  • 最高裁昭和61年10月9日判決 自賠法16条請求の損害賠償支払債務は、期限の定めのない債務であり、保険会社が被害者から履行請求を受けた時点から履行遅滞となるものとされた。
  • 最高裁昭和61年11月4日判決 女児の死亡逸失利益算定につき男女間格差は不合理で男女雇用平等法等からも賃金センサス男女総平均数値を使用すべきであるとする主張を退けた。
  • 最高裁昭和62年1月19日判決 女子中学生の死亡逸失利益算定につき、賃金センサスの男女間格差は、労働市場の実態を反映していると解され、家事労働分を加算しなかった原審が正当とされた。
  • 最高裁昭和62年2月20日判決 けんかで会社所有の加害自動車にひき殺されたことから、遺族が自家用自動車保険金を被害者請求する事案につき、加害運転者の故意による事故ではあるが、加害運転者は会社の業務執行機関に当たらないとされ、保険金支払いが命じられた。
  • 最高裁昭和62年5月29日判決 保険金額が保険価額に達しない一部保険の場合、一部保険の比例分担の原則に従い、填補した金額の損害額に対する割合に応じて、被保険者が第三者に対して有する権利を代位取得するものと解するのが相当とされた。
  • 最高裁昭和62年10月22日判決 路上に倒れていた男が加害車両を乗り逃げする事態が全く予想しえなかったとし、早く通報すべくエンジンキーを差し込んで車を離れたとしても、運転者に車両管理の過失はなかったとされた。
  • 最高裁昭和63年2月16日判決 友人間で事故車を譲渡することとしたが、名義変更、代金支払期日を決めず、譲渡人が転任、その後自動車税も負担し、自動車保険料も解約しようとしたが、無事故割引の関係で解約しない方が良いと代理店にいわれたため、そのままにしていた際、譲受人が事故を起こした事案につき、代金支払いや名義変更は完了していなくても所有権移転は転任した時とされ、約款一般条項第5条によって保険会社は免責とされた。
  • 最高裁昭和63年4月21日判決 外傷性頭頚部症候群とは追突等による鞭打ち機転によって頭頚部に損傷を受けた患者が示す症状の総称であり、その症状は身体的原因によって起こるばかりでなく、外傷を受けたという体験により様々な精神症状を示し、患者の性格、家庭的、社会的、経済的条件、医師の言動等によっても影響を受け~中略~衝撃の程度が軽度で損傷が頚部軟部組織にとどまっている場合には~中略~ほとんど1ヶ月以内、長くとも2、3ヶ月以内に通常の生活に戻る事ができるのが一般である。
  • 最高裁昭和63年4月28日判決 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとする場合には、交差する道路に比して幅員が明らかに広いときであっても、徐行義務は免除されないものと解するのが相当であるとされた。
  • 最高裁昭和63年6月16日判決 フォークリフトのフォークに軽四輪貨物車が衝突した事案につき、フォークリフトによる荷降ろしが予定されている車両であっても、当該装置の用い方に従い用いることによって発生したとはいえないとされ「運行 によって」に当らず自賠法3条責任が否定された。
  • 最高裁昭和63年6月17日判決 右半身機能全廃による自力移動不可能、発声機能の完全喪失等で1級後遺症を残す7歳男子の生存可能年齢は40歳までとする原審は是認できるが、後遺障害に基づく逸失利益の請求のうち満40歳を超える分の請求を棄却した部分を破棄するとされた。
  • 最高裁昭和63年9月30日判決 胸椎圧迫骨折等で労災5級の後遺症を残すとするタクシー運転手の事案につき、3,565万円余の支払いを命じた1審判決を、軽微追突であり、胸椎圧迫骨折は疑わしいとして取消した2審判決を最高裁判所も支持した。

最高裁判例 平成以降のもの

  • 最高裁平成1年1月19日判決 所得補償保険金を支払った保険会社は第三者に対して賠償請求権を取得し、被害者は支払いを受けた保険金の限度で加害者に対する休業損害請求権を喪失するとされた。
  • 最高裁平成1年3月9日判決 箱乗りの状態は、自動車保険約款にいう「正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者」には該当しない
  • 最高裁平成1年4月11日判決 労災保険給付金の填補は、損害合計額から過失相殺した金額を控除し、その残額から労災保険給付金の価額を控除する。
  • 最高裁平成1年4月20日判決 保有者に対する損害賠償債権と被害者に対する損害賠償債務が同一人に帰したときは、16条請求権も民法520条の混同により消滅する。
  • 最高裁平成1年6月6日判決 会社はマイカー通勤を禁止していたが、黙認して事実上利益を得ており、便宜も図っていた場合に、会社に運行供用者責任を認めた
  • 最高裁平成1年12月22日判決 離婚した夫が代理人として行なった保険金の受領について、示談は正当な権限に基づかないでしたもので成立しなかった無効のものとされた。
  • 最高裁平成2年3月23日判決 死亡事案で、得べかりし利益の喪失による損害賠償の額につき、ホフマン式で算定したことは不合理な算定方法ということは言えない。
  • 最高裁平成3年2月5日判決 Xの父親所有の車を借りて友人Yが運転してドライブの途中に事故が生じ同乗中のⅩが死亡した事案で、Xの運行供用者責任が否定された。
  • 最高裁平成3年4月23日判決 パーキングエリアで駐車仮眠中に一酸化炭素中毒死した運転者は、排気ガスによって死亡したものとは認められないとした
  • 最高裁平成3年11月8日判決 大卒独身男子の死亡逸失利益算定につき、実収入ではなくセンサス大卒平均で57歳定年まで生活費50%控除、ホフマン式で算定した2審は「正当として是認する」とされた。
  • 最高裁平成3年11月19日判決 右折のため交差点内に停止していた先行車を左側より追い越し、前に割り込む形で強引に右折しようとした被害原付自転車に全過失があるものとされた。
  • 最高裁平成4年4月10日判決 被上告人が運転していたと主張する事案で、事故解析結果により被上告人が運転していないとの判断を認容し、上告人の請求を棄却した。
  • 最高裁平成4年4月24日判決 運転者及び同乗者が死亡した事故で、同乗者は事故車の共同運行供用者にあたるが、特段の事情があったことが認められ、同乗者の他人性が認められた。
  • 最高裁平成4年6月25日判決 タクシーが普通貨物車に追突されて、精神障害を発症して3年後に死亡した事案につき、事故の1か月前に罹患した一酸化炭素中毒と本件事故とが併存競合して死亡したとされ、死亡と本件事故の相当因果関係が認められた。
  • 最高裁平成4年7月10日判決 片側2車線道路を左側車線を走行する被害車に、酒気帯びで無灯火で逆走してきた加害車が衝突した事案で、被害車には過失がないとした。
  • 最高裁平成4年12月18日判決 発進を阻止している者を振切り発進させ、受傷させた事案で、被保険者の故意によって生じた損害に該当するものと、保険会社の免責を認めた。
  • 最高裁平成5年3月16日判決 道路以外の場所のみにおいて運行の用に供する自動車であっても、その本来の用途から外れて道路上を走行中に事故が発生した場合、政府の自動車損害賠償保障事業でてん補されるものとされた。
  • 最高裁平成5年3月24日判決 被害者またはその遺族に対して社会保険法に基づく各種年金が給付されている場合、現在具体的に確定している給付分は控除するとされた。
  • 最高裁平成5年3月30日判決 未必の故意により被害者を死亡させた場合でも、傷害の故意に基づく行為により死亡させて賠償責任を負う被保険者には自動車保険約款の故意免責は適用されないとされた。
  • 最高裁平成5年4月6日判決 自賠法72条請求においては、内縁の妻も配偶者と同一のものであるとした。
  • 最高裁平成5年9月9日判決 センターラインを越えてきた加害乗用車に衝突され14級後遺障害を残し、3年7か月を経過して自殺した事案につき、事故と自殺との相当因果関係が認められた。
  • 最高裁平成5年12月3日判決 11歳男子小学生が、併合1級相当の後遺障害を負ったため職業介護人を雇用した事案で、通常支払うべき職業介護人費用が相当であるとの原審判断を最高裁も支持した。
  • 最高裁平成6年2月3日判決 自損事故により同乗者2名が受傷し、搭乗者傷害と自損事故保険を請求する事案で、3名が共謀して故意に事故を発生させたとして故意免責が認められた。
  • 最高裁平成6年3月25日判決 保険会社における自賠法16条に基づく被害者への損害賠償額支払債務は、被害者から履行請求を受けた時点を時効の起算点とする。
  • 最高裁平成6年6月13日判決 被保険車両を入替えて38日後に起こした対物賠償保険事故で、入替未承認により保険会社は免責された。
  • 最高裁平成6年7月18日判決 控訴審係争中、加害者側から一審判決で命じられた賠償額の弁済があった場合に、その弁済は有効なものであり、被害者側で控訴審議中を理由に弁済が拒否されたため、供託した場合でも有効なものであると判断された。
  • 最高裁平成6年11月22日判決 父親の乗用車を無免許の息子が友人に貸すよう父親に頼み、自らは助手席同乗中、友人が居眠り運転でガードレールに衝突し死亡した事案で、被害者息子は自賠法上の他人に当たるとされた。
  • 最高裁平成6年11月24日判決 33歳男子が後遺障害等級1級3号の植物状態となった事案につき、口頭弁論終結時から約10年の推定余命であるとされた。
  • 最高裁平成7年1月30日判決 被害者側が受領した搭乗者傷害保険金は、損害賠償額から控除できないとされた。
  • 最高裁平成7年4月25日判決 被害者の受取り拒絶により、賠償債務を弁済供託した場合、供託の還付をいつでも受け取る事ができるのが相当とされた。
  • 最高裁平成7年5月30日判決 貨客兼用のワゴン車の後部座席を倒した状態の場所の搭乗者は、正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者に当たらないとされた。
  • 最高裁平成7年5月30日判決 運転免許を持つAの誘いで、B所有の車でドライブに出掛けた途中、運転者がAから無免許のCに交代した後、自損事故で川に転落しAが死亡した事案で、Aは自賠法3条の他人に当たるものと解された。
  • 最高裁平成7年7月14日判決 訴訟の判決による遅延損害金を支払う旨の約款は、判決による場合に限るものと解釈した原審判決を最高裁も正当なものとして是認した。
  • 最高裁平成7年9月28日判決 荷台からパワーショベルを降ろすために傾斜させた際、パワーショベルが荷台から転落し、乗車していた被害者が死亡した事案で、右事故は自賠法3条の「運行によって」及び「他人」に該当するとした原判決を支持した。
  • 最高裁平成7年10月24日判決 保険外交員が所属する保険会社が休業・欠勤扱いしていない通院についても休業損害を認めた原判決には、法令の解釈適用の誤り、ひいては審理不尽、理由不備の違法があるものと、高裁に差し戻した。
  • 最高裁平成7年11月10日判決 自動車保険約款の免責条項でいう配偶者には、法律上の配偶者だけでなく、内縁の配偶者も含まれるとされた。
  • 最高裁平成8年1月18日判決 男子大学生の死亡逸失利益算定で、1審は賃金センサス大卒全年齢平均・ホフマン式で認定したが、2審は大卒初任給・ホフマンに変更し、最高裁もこれを支持した。
  • 最高裁平成8年3月5日判決 政府保障事業に対し賠償請求したが消滅時効を理由に却下された事案で、自賠法3条による損害賠償請求権が存在しないことが確定した時から被害者の有する本件規定による請求権の消滅時効が進行するというべきであるとした。
  • 最高裁平成8年4月25日判決 47歳男子大工は後遺障害の症状固定した7日後に、事故とは無関係に貝採りに海に入って心臓麻痺で死亡した。最高裁は特段の事情のない限り、死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきではないとした。(貝採り判決)
  • 最高裁平成8年5月31日判決 12級後遺障害が固定した3か月後、別の交通事故で死亡した男子高校生の事案で被害者の死亡が病気、事故、自殺、天災等のいかなる事由に基づくものか、死亡につき不法行為等に基づく責任を負担すべき第三者が存在するかどうか、交通事故と死亡との間に相当因果関係ないし条件関係が存在するかどうかといった事情によって異なるものではないと判示して後遺症逸失利益を認め、死亡後の生活費を控除することもできないとした。
  • 最高裁平成8年10月8日判決 住民票を家族と別に移していた場合でも、自動車保険約款でいう同居の親族に該当するとされた。
  • 最高裁平成8年10月29日判決 63歳男子タクシー運転手は事故直後から頚椎後縦靭帯骨化症が判明し、これが原因で治療期間の長期化や後遺障害の出現が明白とされたが、1,2審は事故前は症状はなかったのだからあるがままに賠償すべきとしたが、最高裁は疾患の影響が明白であれば、斟酌できるとした。(あるがままでない)
  • 最高裁平成8年10月29日判決 追突により胸郭出口症候群、バレリュー症候群と診断された30歳主婦兼家業手伝いは、首が長いという身体的特徴があったが、これにより素因減額をすることはできないとした。(首なが判決)
  • 最高裁平成8年11月14日判決 約款の「運転資格を持たない」とは、道路交通法と同一に解釈すべきで、免許失効中の本件は免責に該当するとした。
  • 最高裁平成8年12月19日判決 予備バッテリーが爆発した事故で、自損事故保険の運行には該当しないとされた。
  • 最高裁平成9年7月11日判決 (参考)カリフォルニア州裁判所の懲罰的損害賠償としての金員の支払いを命じた部分は、我が国の公の秩序に反するから、その効力を有しない。
  • 最高裁平成9年9月4日判決 自動車共済約款一般条項5条にいう「譲渡」は「譲渡する旨の合意が成立し、被共済自動車が引き渡され、譲受人が右自動車を使用し支配すること」であるとした。
  • 最高裁平成9年9月9日判決 運転者と恋愛関係にある同乗被害者が死亡した事案で、両人は身分上、生活関係上の一体性があるとはいえないと被害者側の過失としての過失相殺がなされないとした。
  • 最高裁平成9年10月17日判決 自損事故保険、搭乗者傷害保険の保険金を請求する者は保険事故が発生したことを主張、立証すべき責任を負うとした。
  • 最高裁平成9年10月23日判決 代理店が事故前までに追加保険料を受領しなかった空白の1日に本件事故が発生した事案で、保険会社が免責された。
  • 最高裁平成9年10月28日判決 米国製乗用車が損壊し、修理費用276万円を請求する事案で、特殊な車として修理費を請求しても、ガイドブックにも登載されている車は、市場交換価格が損害の限度となると、70万円の損害とした。
  • 最高裁平成9年10月31日判決 運転代行に依頼して同乗中の運行供用者は他人であるとした。
  • 最高裁平成9年11月11日判決 車両火災を故意により発生したと認定し保険が免責された。
  • 最高裁平成9年11月27日判決 2時間の約束で自動車を貸与したところ借り主は返還せず、再三の返還請求にも応じることなく32日後に死亡事故を発生させた事案で、貸主の運行供用者責任を否認した。
  • 最高裁平成10年6月11日判決 死亡した被害者の収入算定について、近い将来転職によって平均賃金程度の収入が得られたという蓋然性が認められるなどの特段の事情がない限り、賃金センサスに依拠するのは相当でない。
  • 最高裁平成10年9月10日判決 健保組合が加害者に代位請求する事案につき、健保組合は療養の給付時に残存する額を限度に請求権を代位取得するとされた。
  • 最高裁平成10年9月29日判決 ドライバー保険において、同居の親族からの借用車が約款の除外規定であると説明することは告知義務に当たらないものとした。
  • 最高裁平成10年12月17日判決 会社所有の車が海中に転落し死亡した事案で、役員であることを理由に運行供用者責任の立場であるとはいえないと、他人性を認めた。
  • 最高裁平成11年1月29日判決 共同不法行為責任を負うAとBが、Bのみ過失相殺が適用され、Aは無過失とされたため、それぞれの賠償額が異なる場合、自賠責保険の填補は、Aの負担すべき損害額から控除し、その残損害額がBの賠償額を下回わらない限り、Bの賠償額に影響しないものとされた。
  • 最高裁平成11年3月25日判決 乗用車が崖下に転落し死亡した運転者の遺族が自損・搭傷保険金請求訴訟を提起したが、遺書風のメモを残していることで自殺する可能性も十分考えられるので過失に起因するとは認め難いとした。
  • 最高裁平成11年4月22日判決 捜査機関が認定したことを知りながら、別の者を運転者と主張して訴訟提起する行為が違法行為であるとは言えないとした。
  • 最高裁平成11年7月16日判決 クレーン作業員が誤ってトラックの運転手に鋼管を落下させ、運転手が死亡した事故につき、運転手は作業員を指示・監視する立場でなく運転者の他人性が認められた。
  • 最高裁平成11年7月19日判決 突発的事故に遭遇した場合における空走時間を0・6秒とするのは、自動車運転者に酷に過ぎるものと、衝突回避は不可能と乗用車無過失とした。
  • 最高裁平成11年10月22日判決 相続人が被害者の死亡を原因として遺族基礎年金及び遺族厚生年金の受給権を取得したときは、当該相続人がする損害賠償請求において、支給を受けることが確定した右各遺族年金は逸失利益から控除すべきである。
  • 最高裁平成11年10月8日判決 修理した所有権留保ディーラーの車両保険請求権を認めなかった。
  • 最高裁平成11年10月26日判決 不法行為に基づく損害賠償債務は、損害の発生と同時に、何ら催告を要することなく、遅滞に陥る。
  • 最高裁平成11年12月20日判決 1級後遺障害を残す女子が、事故の2年後に自宅内で転倒し、急性硬膜外血腫によって死亡した事案で、死亡した以後の介護費用が否認された。
  • 最高裁平成12年3月9日判決 被害者の直接請求権は、転付された債権額を控除した残額を超える額の責任賠償金については、支払請求権はないものとされた。
  • 最高裁平成12年7月12日判決 相手方の同意を得ずに会話を録音したテープに証拠能力があるものと認められた。
  • 最高裁平成12年7月17日判決 中間利息控除3%で請求する上告が棄却された。
  • 最高裁平成12年9月7日判決 (参考)借金を残して殺害された被害者の相続人が、相続放棄の上、殺害行為の幇助者に扶養利益の侵害について損害賠償請求が認められた。
  • 最高裁平成12年9月28日判決 ロールスロイス海中に転落し、エンジン切らずに運転者が車を離脱、比較的近接した時期に運転者限定特約を解除していることなどから故意免責された。
  • 最高裁平成12年11月14日判決 軍人恩給の扶助料と特別給付金は逸失利益には当たらないとした。
  • 最高裁平成12年11月14日判決 遺族厚生年金は逸失利益に当たらないとした。
  • 最高裁平成13年3月13日判決 医療過誤と加害者の共同不法行為責任では各不法行為者が全額を負担するとされた。
  • 最高裁平成13年4月20日判決 保険金を請求する者は、事故が偶発的であることについて主張・立証すべき責任を負うものとされた。
  • 最高裁平成13年9月11日決定 2歳女児の死亡で性別による不合理な差別とはいえず、男子平均賃金の請求を否認し、女子平均賃金で認定し上告棄却。
  • 最高裁平成14年5月31日決定 14歳女子の死亡逸失利益算定で,センサス男女全労働者全年齢平均賃金を基礎にし上告棄却。
  • 最高裁平成14年7月9日決定 10歳女子の死亡逸失利益算定で、控訴審の女子全年齢平均で認定した上告審も棄却した。
  • 最高裁平成14年7月18日判決 自賠責保険の傷害・死亡保険金額を合算した3120万円をもって損害賠償額を一括控除した残金で賠償請求することは法令に違反するとした。
  • 最高裁平成15年7月11日判決 追越中のA車とB車の正面衝突で、夜間、駐車禁止の片側1車線道路にはみ出し駐車していた未接触駐車車両に5分の1の賠償責任を認めた
  • 最高裁平成16年12月13日判決 火災保険請求事件では契約者らの故意又は重大な過失の主張立証は損保側が負う。
  • 最高裁平成16年12月20日判決 Ⅰ被害者の相続人が、その死亡を原因として遺族厚生年金の受給権を取得したときは、支給を受けることが確定した遺族厚生年金を控除すべきである。
    Ⅱ相続人が受給することになった労災の遺族補償年金及び厚生年金保険法の遺族厚生年金と自賠責保険からの賠償金が支払い時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは、遅延損害金の支払債務にまず充当される。
  • 最高裁平成16年12月24日判決 後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、遅くとも症状固定の診断を受けた時となる。
  • 最高裁平成17年6月2日判決 Ⅰ自賠法72条政府保障事業による保証金の支払債務は、政府が被害者から履行の請求を受けた時から履行遅滞となる。
    Ⅱ国民健康保険法58条1項の規定による葬祭費の支給額の控除は、過失相殺の後にする。
  • 最高裁平成17年6月14日判決 逸失利益の中間利息控除は、民事法定利率の5%とした。
  • 最高裁平成17年11月21日判決 公立病院の診療報酬債権の消滅時効は、地方自治法236条1項の5年ではなく、民法170条1号の3年が適用される。
  • 最高裁平成18年3月30日判決 自賠責保険支払基準は個別具体的な訴訟事案を拘束するものではなく、裁判所はその限度額の範囲内で支払を命じることができる。
  • 最高裁平成18年3月28日判決 事故のために緊急帝王切開で出生した子が重度の後遺障害を残した場合に、無保険車傷害条項において胎児も被保険者に含まれるとした。
  • 最高裁平成18年6月1日判決 海中への車両の水没事故で、保険金請求者は事故がその意思に基づかないものであることの主張、立証責任を負わないとした。
  • 最高裁平成18年6月6日判決 車両保険の請求で、被保険者は事故がその意思に基づかないとの事について立証責任を負うものではないとした。
  • 最高裁平成18年10月6日決定 盗難車両の保険金請求で、ローンや保険料負担が中古車業者である長男であることから所有者に被保険利益はないとした。
  • 最高裁平成19年4月17日判決 盗難による車両保険金の請求において、免責の主張立証責任は保険者が負うとした。
  • 最高裁平成19年4月23日判決 屋上駐車場からの車両盗難は、持ち去られたことを立証しなければならず、矛盾のない状況を立証するだけでは足りないとした。
  • 最高裁平成19年4月23日判決 同日に2台の車を盗難された車両保険金請求につき、外形的事情の主張立証で足り、意志に基づかないものとの立証責任は負わないとした。
  • 最高裁平成19年4月24日判決 内縁の夫の運転する車両に同乗中に事故にあった妻の損害につき、夫の過失を被害者側の過失として考慮された。
  • 最高裁平成19年5月29日判決 高速道路で単独事故を起こし、路肩へ退避のため歩行中に礫過死亡した場合に運行起因性を認め搭乗者傷害保険の支払いを命じた。
  • 最高裁平成19年10月19日判決 『外来の事故』には、疾病による運行事故も該当するとして、疾病免責条項のない人身傷害保険金の支払いを認容した。
  • 最高裁平成19年11月6日決定 自損事故傷害保険の請求につき、アルコール血中濃度が低くても運転能力に影響があれば正常な運転ができない状態として免責を認めた。
  • 最高裁平成20年2月19日判決 老人保健法の給付による求償と、被害者請求が競合した場合、被害者が優先して損害賠償額の支払いを受けられる。
  • 最高裁平成20年2月28日判決 車両盗難保険金の請求につき、消滅時効の起算点を保険会社からの免責通知書到達日の翌日であるとした。
  • 最高裁平成20年7月4日判決 暴走行為をしているバイクに同乗中の被害者が、パトカーに車線をふさがれ転倒、死亡した事案で、行為の態様から運転者の過失を同乗被害者の過失として考慮すべきとした。
  • 最高裁平成20年9月12日判決 泥酔した娘を乗せ、娘の友人が運転中に起した事故につき、娘に車を貸した父親に運行供用者責任を認めた。
  • 最高裁平成20年10月7日判決 被害者の父が締結していた人身傷害補償保険金の支払額を損害額から控除した原審の判断が差戻された。
  • 最高裁平成21年12月17日判決 健康保険法や労災保険法において、被害者が損害の填補に相当する年金受給権を持つ場合は、その将来の給付分も含めて、政府保障事業は、損害を填補しない。
  • 最高裁平成22年3月2日判決 高速道路にキツネの侵入防止措置が不十分で瑕疵ありとの主張について、同類の事故件数、対策費用、注意喚起状況等から瑕疵はないとされた。
  • 最高裁平成22年9月13日判決 後遺障害によって障害基礎年金等の支給が確定した分については、逸失利益の元本との間で損益相殺的調整を行い、遅延損害金との間で損益相殺的な調整は行うべきではない。
  • 最高裁平成22年10月15日判決 労災保険法に基づく休業給付および障害一時金は、休業損害および逸失利益の元本との間で損益相殺的な調整を行うべきであり、遅延損害金で調整を行うべきではない。
  • 最高裁平成24年2月20日判決 人身傷害補償特約により保険金を支払った損保会社による損害金の元本に対する遅延損害金支払い請求権は代位取得できるか。
  • 最高裁平成24年5月29日判決 人身傷害補償特約の被保険者に過失がある場合、保険会社は、保険金の額と過失相殺後の損害賠償金の額との合計額が裁判基準損害額を上回る額の範囲で請求権を代位するとした。
  • 最高裁平成24年4月27日判決 損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めが無い無保険車傷害条項に基づき支払われるべき保険金の額の算定方法。
  • 最高裁平成27年3月4日判決 遺族補償年金は扶養利益の喪失による損害と同性質であり、逸失利益の算定上、損益相殺的な調整を行うべきとした。
  • 最高裁平成28年3月4日判決 老人デイサービスの送迎車から降車する際に大腿骨を骨折した場合について、搭乗者傷害保険の運行起因性を否定した。
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