寝たきり者の入院慰謝料

交通事故オンライン損害賠償編

千葉、都内、埼玉、茨城を中心に全国対応
伊佐行政書士事務所

症状固定日との関係

第一級などの重い後遺障害が残った人の中には、事故後、生涯のほとんどをベッドの上で過ごさなければならない人もいます。 遷延性意識障害、四肢麻痺などの後遺症が残った方たちです。 そうした方たちの傷害(入院)慰謝料を計算するには、入院期間を確定する必要がありますが、仮に生涯離床できない可能性が高くても、入院慰謝料は全期間について 認められるわけではありません。認められるのは症状固定日までの分となります。

慰謝料は事故から症状固定日までの間は、傷害慰謝料として計算されます。 そして症状固定日後は後遺障害慰謝料として計算されます。 傷害慰謝料は入院期間により金額が大きく変わってきますが、後遺障害慰謝料は等級によって金額がだいたい決まっています。

症状固定とは、医学上一般に承認された治療方法をもってしてもその効果が期待できず、 残存する症状が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したことをいいます。 しかし同じような傷病であっても、整形外科学的、脳神経外科学的に見た場合でも、受傷から症状固定までの 期間はまちまちです。実際に遷延性意識障害や四肢麻痺の方の中でも、症状固定までの期間が6ヶ月程度の人もいれば、 2年とか3年後の人もいるのです。症状固定期が遅ければ、一般に傷害慰謝料は高額になります。

症状固定日の差でこれだけ違う

具体的に数字に置き換えて比較してみましょう。事故から10ヶ月後に症状固定とした場合の傷害(入院)慰謝料は、基準とおりであれば例えば300万円程度となります。 同じ傷病名でも、事故から2年後に症状固定とした場合は、例えば400万円程度になります。後遺障害慰謝料は入院期間にかかわらず、 第一級の場合は例えば2800万円くらいです。そうすると事故以来ずっと同じようにベッドで過ごしている人でも、症状固定日によって、慰謝料の金額に100万円もの差がでる 可能性があるのです。

実務では慰謝料表とおりに計算されているのか?

同じように入院しているのに、症状固定日の判断が異なるだけで、慰謝料に大きな差が でることには矛盾を感じます。そこで本当にそのような矛盾が存在するのかをみるため、 遷延性意識障害や四肢麻痺で、第1級の後遺障害に認定された人の入院慰謝料の裁判例等を比較検討してみました。

実際のケースでは傷病名と入院期間のみで計算がされるわけではないため、単純な比較は困難でしたが、他の等級と比べますと、入通院慰謝料表に忠実に計算したと みられる例よりも、ざっくりと300万とか400万円という認定がされている例が目立つように感じました。これは症状固定日以降も 入院生活が続くという事実を考慮したものではないかとも受け取れます。しかし一方で、症状固定までが1年程度のケースと、3年程度のケースをそれぞれ複数比べてみますと、 100万円程度の違いがある例も目立っています。

結論

明確な傾向は見い出せませんでしたが、訴訟外の交渉をされる方は、症状固定日までの入院期間を意識しすぎて、低い慰謝料であきらめてしまうことのないように 注意するべきでしょう。