ヘルメット着用の違法性の有無による違い
いまやオートバイに乗るときにヘルメットを着用することは常識となっておりますが、昔はヘルメットを被ることは義務化されていませんでした。 たとえば1986年以前は50ccの原動機付自転車はノーヘル運転でも法令による義務違反とはならなかったのです。オートバイや自動車を運転する時には、ヘルメットに限らず、 望ましい服装などがありますが、それらを守っていなかった場合の過失はどのように評価されるのでしょうか。
着用が法的に義務づけられていたわけではない昭和61年1月の事故で、原付自転車運転者がヘルメット不着用で脳挫傷によって死亡した事案につき、 ヘルメットを着用していなかったことを過失相殺の事由として斟酌するとされ、1割の過失相殺が適用された事例がありますが、別の事例では、義務違反ではないということを理由に、 過失相殺しないと判断されたものもあります。
着用が義務化された後には、多くの例で過失相殺がされているように見受けられますが、注意義務違反や速度超過などの過失に加算されている例が多く、何%程度の過失とされるのかは明らかにはできませんでした。 ただし一般的には「著しい過失」として取り扱われています。
- ▼ 事例・判例
- □ ヘルメットを被っていなかったが、傷害等の部位(頸部)からして、 ヘルメット非着用が原告の損害の拡大に寄与したものと認めることはできないとした事例。
ヘルメット以外の事例
サンダルを脱いで裸足で車を運転中に追突されて足指を骨折した被害者の事案で、裸足で運転したから足指を骨折したものと、 50%減額を主張する加害者に対し、裸足で運転したことは違法ではないし、事故が加害者の一方的過失により発生していることから、損害額を減額することは相当ではないとした事例があります。